「Rigged Out/fitters」デザイナー パリサ・パルニアン

By Yuki Keiser 2006.11


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1. ニューヨークと東京について

Profile: パリサ・パルニアン
Parisa Parnian 1972年イラン首都テヘラン生まれ、アメリカ・アリゾナ育ち。ニューヨークのParsons School of Designでファッション・デザインを学んだ後、数々のアパレル会社に勤め、2004年に自身のブランド「Rigged Out/fitters(リグド・アウトフィッターズ)」を設立。アメリカのレズビアン・ヒットドラマ「The L word」でも使用され、現在クィア・シーンで最も注目を浴びている洋服ブランド。


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――パリサはニューヨーク出身ではないよね。ニューヨークへはじめて来た頃の様子はどうだった?

当時私は24才。アリゾナからニューヨークに引っ越してきて、とってもフェミニンでグラマラスなルックスだったの。多分アメリカのクィア・カルチャーではそれを「ハイフェム」と呼ぶんだと思う。はじめてニューヨークのクラブに行ったのは、ある水曜日の夜だったんだけど、当たり前のように「いろんな人に声をかけられるだろうな」なんて思ってたわね。そのときのルックスは、アリゾナではものすごくもててたから、自信満々だったわ。でも、いつまで経っても誰も話し掛けてくれないの。それでようやくダイクっぽい子が三人きたと思ったら、こうよ。「賭けをしてたんだけど、あなたどんなバーに居るのか分かってる!?」って。で、「あなた、ノンケでしょ? 場違いよ!」…すごいショックだったわ! 今さら自分がレズビアンだって証明しないといけないなんて(笑)。

――(笑)それっていつ?

10年前。その頃のニューヨークでは、アンドロジナスな子が一番クールだと言われていた時期なの。短いスパイキーヘアに、革ジャン、ジーンズ、みたいな。そんななか、私はお姫様みたいな格好で登場しちゃったもんだから、ノンケか興味本位のバイだと思われたみたいなのよ。「正真正銘のダイクではない」みたいなね。これがニューヨークでのウェイクアップ・コール! ここに来る前は、見た目とかラベルとか全然気にしてなかったわ。付き合う子はフェムだったり、ブッチだったり、ボーイッシュだったり、好みは特になかったのね。でもニューヨークは極端で過激なところだから、「あなたは誰? あなたはどっちなの? どっちかに決めなさい!」って迫られる感じ。

――それでルックスは変えたの?

変えたわ(笑)。引っ越してきて何年かして、モロッコ人の彼女ができたんだけど、その人は女性らしい人が好きだったの。「私、髪の毛を切ろうと思うの。ドラァグキングになってみたいから」って言ったら、彼女は「髪切ったら別れるわよ!」って。それでも私は髪を切ったのよね。普通の長い髪から、エルビスのような髪型になったのよ! とっても楽しかった。

――その結果彼女にふられちゃったの?

その後別れたけど、髪型が原因じゃなかったわ。今ではいい友達よ。

――ニューヨーク・シーンは今どんな感じ?

ニューヨークはコスモポリタンな大都市だけど、レズビアン・バーに関しては人種がまだ分離してると思うの。あるクラブでは、アフロ・アメリカンの女性ばっかりだったり、他のクラブにいけばラテンの女性ばっかりでみんなスペイン語を喋ってたりね。

――アジア人ばっかりのクラブとかもある?

残念ながら私はまだそういうクラブには行ったことがないの。そういえば、親友に韓国人とドイツ人のハーフの子がいるんだけど、彼女はよくパーティなんかをオーガナイズしていて、いつもアジア人を集めようとしてるわね。話をニューヨークのシーンに戻すけど、ラテン系とかアフロ・アメリカンの中では、男性っぽい・女性っぽい女性がまだずいぶんとはっきり分かれているようね。私のいるシーンは残念ながら白人がメインなんだけど、パンク・ロックがメインだわ。だから、性指向というよりは、ライフスタイルのほうにフォーカスしていると言えるわね。どんな音楽を好んで聞くとか、髪とか洋服のスタイルとかにね。日本ではレズビアンの間での区別はどんな感じなの?

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――日本ではまたちょっと違うかなぁ。最初びっくりしたのが、はじめて日本のレズビアンのクラブに行った時、声かけられていきなり立て続けに三つ聞かれたこと。まず、レズビアンかどうか、次に彼女がいるかいないか、そして「タチ」か「ネコ」か。日本のクラブで、初対面に自分のベッドでの役をいきなり当たり前のように聞かれたから衝撃的だった!

「タチ」、「ネコ」って?

――外見のことや、精神的なこと、セックスについてとか、色んな説があるの。一概にそうとは言えないんだけど、簡単にいうと、「タチ」は外見がボーイッシュでセックスでは「する側」のことを指すの。英語でいうと多分、「トップ」や「ブッチ」に相当するのかな。ネコはその逆で、ガーリッシュな外見で、セックスでは「される側」を示すの。英語でいうと、「ボトム」や「フェム」かな? あと、英語で何ていうか分からないけど、「リバ」っていうのもあるのよ。両方の役割をする意味ね。

それ、「スイッチ」! 「スイッチ」っていうのよ、英語では(笑)。

――そうなんだ(笑)。日本ではボーイッシュな女の子はタチだと思われがちで、要は「触るだけ」の役割で、ガーリッシュは逆が多い。だから、タチの中には洋服も全く脱がない子もいるし、それがわりと普通みたい。そういう子たちを「バリタチ」って呼ぶの。英語に訳したら「ウルトラ・トップ」かな?

英語でもそういう言葉あるよ。「ストーン」っていうの。「ストーン・ブッチ」は、外見が男性っぽくて日本でいうところの「バリタチ」、セックスの時は服さえ脱がないの。

――アメリカではみんな「リバ」かと思っていたんだけど。そうじゃないの?

そうでもないよ。まぁ、確かに日本ほど役割はそんなに決まっていないと思うけど。私も実際そういう人と付き合ったことあるよ。しかも、すごく男っぽい見た目の子やトランスの子と付き合ったんだけど、その子達はベッドの中では…ネコだったわよ(笑)。

――そういうの、良く聞く。でも残念ながら、日本ではそれがまだそんなに受け入れられていないような気がするの。ボーイッシュな子で実はネコなんだけど、外見上それがあまりいい目でみられないから、言えないでいる子の話いっぱいきくよ。ラベルとかカテゴリーにはまってしまっているのよね。

それって50年代のアメリカのように聞こえる。当時、バーに入ったら、自分がブッチかフェムのどちらか役割を決めてなきゃいけなかったのよ。たとえば自分がブッチなのに、ガールフレンドに触らせてたのがバレたらとても恥ずかしいことだったのよ。

――そうなんだ。日本ではそこまで極端ではないし、状況も変わってきているとは思うけど。例えば、「スカタチ」って面白い言葉があるんだけど。それはフェミニンな姿の「触る側の子」のことなの。「スカ」はスカートのことで、いわば「スカート姿のタチの子」の略なのよ(笑)。

あら私、それかも(笑)。すごい面白いね!

――で、「ズボネコ」っていうのもあるのよ。「ボーイッシュなルックスの受け身」って言う意味。「ズボ」は「ズボン」のことで、「ズボン姿のネコ」ね。

んまぁ!

――最近はそこまで厳密ではないけど、それでもまだフェムはブッチと付き合う傾向が強くて、ボーイッシュ同士のカップルってあまり見ないかも。旦那同士のカップルの意味で、一応「ダナ系」っていう言葉はあるけど、あまりポピュラーではないみたい。アメリカでもボーイッシュ同士のカップルって少なくない?

最近はすごい流行っているよ。自分たちを冗談で「ホモ・カップル」って呼んでるの(笑)

――そう言えば、日本でもそういう風に言っているカップル聞いたことある(笑)

でも、50年代でそういうボーイッシュ同士のカップルは「キキ」って差別的な言葉で呼ばれていたの。

――あと、日本では「ナベシャツ」っていうのがあるよ。アメリカにもあるかな? 胸を押さえる下着やシャツで、ボーイッシュな子が胸を目立たせないようにする服なの。

えっ? 胸を押さえるシャツ?! マジで?! そんなの聞いたことないよ! すごいクレイジーだわ! 服の下に着るようなベストみたいなのはあるけれど、それは男性用なのよ。クールねぇ。アメリカにはまったくないかも。日本でそんな服が女性用にも作られているなんて素敵。そう言えば、日本についてびっくりする内容のドキュメンタリーを見たことがある。バーテンダーがみんな「男性に見える女性」のバーで、彼らがドリンクを作ってくれたり、一緒にテーブルについて喋ってくれたりするの。お客の殆どがストレートの女性で、仕事帰りに行って、もてなされてるのよ!

――そこで働いている人は女性ではなくて、ほとんどが男性ホルモンの注射を打っているトランスジェンダーなの。接客したり、ショータイムにはダンス・パフォーマンスするのよ。こうしたバーやクラブは、レズビアン向けというより、異性愛者の女性向けなの。ホスト達は皆自分をレズビアンとは思っていなくて、男性として生きているから。

ニューヨークにはそういうクラブはないわね。他のコスモポリタンの大都市でのシーンを知るのは本当に面白いよね。マーケット層についてのヒントにもなるし。これからも意見や情報交換しよう!

――是非!

訳: トンプソン瞳


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