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5月15日、民主党が7月の参院選比例区で前大阪府議の尾辻かな子氏を公認した。ちなみに同性愛者であることを公表して国政政党から国政選挙に出馬するのは日本では尾辻氏が初めて。その出馬記者会見は、5月17日・IDAHOの日に行なわれた。(※IDAHO…1990年5月17日、国連のWHO(世界保健機関)において、国際疾病分類に含まれていた同性愛が疾病の対象から削除された日。それを記念し、約50ヵ国でInternational Day Against Homophobia (IDAHO)(“ホモフォビアと戦う日”)が毎年開催される。act against homophobia)
同性愛を公表して国政選挙に出馬することに関しては、1971年に東郷健氏が無所属でトライしていた。しかし、「時代の流れもあるのでしょうけれど、非常にラジカルな形で、自ら『おかま』という一人称を使い、他のゲイの賛同すら得られなかったという悲しい現実がありました。」と、2丁目振興会会長・福島氏は語る。「それが35年以上経って、同性愛者が政党に公認されて国政にチャレンジできることは非常に喜ばしいことだと思っています」と、歴史的瞬間を示唆した。
記者会見は、尾辻氏の決意表明から始まったが、後半には記者の要望によりパートナーの木村真紀氏も急遽参加、出馬会見が結婚会見へと変わっていった。日本ではとくにレズビアンのカップルが公の場に現れるのがそれだけ珍しいということを印象づけるものとなった。
国政政党から公認された尾辻氏は、会見の冒頭「この公認は日本の社会が変わっていくことへの第一歩。これで日本も人権の成熟が一歩進んだと考えています。」と、ゆっくりと話した。「今の日本では、同性パートナーの法的保証は全くありません。そのため、万が一お互いに何かあったことを考えると不安がつのります。たとえば、パートナーが重病で面会謝絶の状態になった時、同性パートナーは家族として認められるのでしょうか。亡くなった時、遺産相続の権利もなければ、住居が相手名義の契約でしたら、すぐに家を出なければいけません。私たちが日本で当たり前の様に暮らしていこうと思う時、どうしても社会と政治の壁にぶつかります。それを改善するため、諸外国では同性パートナーの法的保証が確保されるなか、日本では政治課題にすらなっていません。したがって、誰かが見える存在になり、自分たちが本当に必要なことを訴えていくのが重要だと考えています」。
調査結果で、10代のLGBTの6割が自殺を考えたことがあり、その15%が実際に行動にうつしたという答えが出た。そういった悩みを抱えている人にこそ尾辻氏は、「一人じゃないんだ。自分らしく生きていいんだ」というエールを送り、「セクシュアル・マイノリティのみならず、この格差社会で生きにくいと感じている多くの人たちにも、社会は変えられる、という希望を与えたい」というスタンスを示した。
決意表明後、40人ほどの記者と4台のテレビカメラに前に、質疑応答に続いた。大阪では無所属で活動を行っていた尾辻氏が今回民主党を選んだ理由について、「国政にチャレンジするにあたって、国政政党でなければ全国比例区から立候補できないという正統制度上の仕組みがあります。民主党を選んだ理由は、民主党が最も解決力があり、政権交代に一番近い政党だからです。小沢代表にも『民主党は、同性愛者の候補が出るのは良いことだと思っている』というお言葉を頂きました。民主党が掲げている『ともに生きる社会=共生』という部分には、セクシュアル・マイノリティである私たちも共に暮らし、生きていると伝えられています。そのためにも、一番最適な選択が民主党であったと感じています」と話した。
安部総理の「美しい国造り」に関しての意見を尋ねられると、「安部首相が自民党の幹事長だった時、『性教育などに対して過激な教育をしないよう』という動きがありました。その時の設問の一つに、家庭科の時間に法律婚以外の家族の形を教えてはいないかという設問がありまして、法律婚以外の家族の形というところに、カッコ・同性婚などと明記されていたんですね。そういう意味でいうと、今の安部総理が掲げている「美しい国」、「美しい家族」には、私たちLGBTは完全にこぼれ落ちていると感じています。しかし今の社会には、多様な生き方をしている人が実際にいるんですね。だから、その現実に合わせて政治・制度をつくり、それが本来あるべき政治の姿であると私は考えます。そういう意味では、今の安部総理の考えていらっしゃる方向は私とは対照的だと思います。一つの価値観を美しいというのか、それとも様々な価値観を持って多様性のある社会を美しいというのかということを提示出来たらと思っています」との見解を示した。
具体的な政策に関しては、当選した場合同性パートナーの法的保証にも取り組みたいという尾辻氏だが、あくまでも民主党のマニフェストに沿って議員活動することを第一義とし、そこから自分らしい政策を党の中で提案をしていくことを強調した。
今年6月に名古屋・池田公園のイベント『NLGR』にて4年来のパートナーと「結婚式を挙げる」ことに関して問われ、尾辻氏はこう説明する。「これはもちろん法律的には全く認められていません。ただ、『見える存在』になっていくという意味で私は今回式を行ないます。日本の社会では、同性パートナーが外で愛情表現するのは道徳的にルール違反と考えられています。そのため、多くの人たちは自分の好きな人と手を繋ぐことすら出来ませんし、ホテルに行ったらダブルベッドを予約するのも難しいです。異性愛者の男女だったら、何の障害もないことなのに、同性愛者だったらできない、というのが現状です。それで『同性パートナーも幸せになれるんだよ、素晴らしいことなんだ』ということを公の場で祝ってもらうのも大事だと思います」。お互いの親も出席するという。
そこから、報道陣の興味は尾辻氏と木村氏のカップルに注がれ、彼女の参加も求めた。なれそめや結婚式の服装について関心が集まり、ワイドショー的な会見への展開をとげ、それまでシリアスだった尾辻氏も「すごい! こんなことを記者会見で話す日が来るなんて!」と躊躇しながらも一つ一つの質問に丁寧に答えた。木村氏も、「木村さんから見た尾辻さんは?」などの質問に快く答えた。「尾辻は真面目な人ですね、とても。まっすぐ、自分の目標に向かって突き進むタイプですね。『どこまで行くの?』って感じもあります(笑)」と、半ほのぼの半コミカルな雰囲気で幕を閉じた会見は、尾辻氏曰く、まさに「日本にも新しい時代の幕が開いた」ことを感じさせた。
Profile: 尾辻かな子
1974年奈良県生まれ。元大阪府議会議員。2003年4月13日、大阪府議会議員選挙で当選する。大阪府議会で女性の最年少議員として注目を集めた。2005年8月に、著書『カミングアウト』を講談社で出版し、日本初のレズビアンとしてカミングアウトした議員となる。その後2007年5月、民主党から参院選比例区で公認され、7月の国政選挙に出馬。www.otsuji-k.com
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