パワーアップ『IBTC』制作秘話について

by Yuki Keiser June 2007


Itty Bitty Titty Committee

1. キャストもスタッフも、まず殆どが女性

 

Itty Bitty Titty Committee

 
『Go!Go!チアーズ』のジェイミー・バビット監督の最新作 『Itty Bitty Titty Committee』 (以下『IBTC』)は、パンク・ロック・レズビアン・フェミニスト映画である。

自分に自信がなく政治にも疎い女の子、アナは、CIA(Clits in Action=活動するクリトリス)というラジカルなフェミニスト・グループのリーダー、セィディと出会う。その団体は、ショー・ウィンドーに飾ってある細身でグラマラスなマネキンたちを、自分たちの作ったマネキンと置き換え、「女のプロポーションはひとつじゃない!」のスローガンを添えるなどする過激なアクティビスト・グループである。この映画のインスピレーション源は、90年代のニューヨークを中心に活動していたフェミニスト・グループ「ゲリラ・ガールズ」や同時期のライオット・ガールズのミュージック・スタイルによるという。サウンドトラックにも、ホール、ビキニ・キル、スレーター・キニー、ピーチズ、レ・ティグレなどの曲が使用されている。

「ゲリラ・ガールズ」とは、ゴリラのマスクをかぶり、女性差別に抗議する、当時の言葉で言えば、ウーマン・リブ、フェミニスト・グループである。彼女達は、シャレっ気のあるメッセージを書いた巨大ポスターを作成し、主にアートギャラリーに貼りつけるなどして、自分達の主張をアピールしていた。たとえば、そのポスターには、「親愛なる美術蒐集家殿。大部分のコレクション同様、あなたのコレクションには、女性アーティストによる作品が少ないことに、我々は気づいております。ご自身でもそれに対してとても遺憾に思われ、即刻、訂正するつもりである事も心得ております。我々からの愛を込めて。ゲリラ・ガールス」などの皮肉たっぷりのテキストが表明されていた。

ポップでユーモアあふれるスタイルとキュートなラブ・ストーリーを背景に、少しずつ深くなっていくこのグループとの関わりによって、アナは徐々にタフでアナーキーなフェミニスト女性へと変身する、という内容である。この映画では、「ポリティカル・アクションもクールだ!」というメッセージを若者世代に伝えたいと言うバビット監督の意図が見受けられる。

この映画は、エンターテイメント業界でレズビアンをサポートする、LAベースの非営利団体『パワーアップ』によってプロデュースされた。パワーアップは、様々な映画祭でも上映されたショート・ムービーを5年間プロデュースした後、今回初めて長編映画に挑戦したのである。今回は、この非営利団体パワーアップが携わっているフィルム・プロダクションと配給のプレジデントでもあるリサ・スラシャー氏にインタビューを行った。場所となったのは、パワーアップの創始者兼CEO&エグゼクティブ・ディレクターであるスティシー氏と同居しているという、ハリウッド・ヒルズのみずみずしい緑に囲まれた豪邸。キャスト&スタッフが殆どレズビアンという、この前代未聞の映画制作の舞台裏について訊いた。
www.power-up.net

【リンク】 ジェイミー・バビット監督のインタビューはこちら


パワーアップ・リサ・スラシャー


――まずタイトルが素晴らしいと思うのですが、その意味を日本の読者に説明してください。

そうね。アメリカの中学校で、胸の小さい女子生徒が男子にからかわれる時、「ペチャパイ委員会」に所属していると言われるのよ! 失礼な冗談なのよね。だから、この映画はそれを逆手にとって、エンパワメントしているの。

――なるほど! 『IBTC』はパワーアップ社初制作の長編映画ですが、その製作へ至った経緯を教えてください。

ジェイミーとアンドレア(映画プロデューサーである、ジェイミーの12年来のパートナー)は映画のアイディアを何年も前から持っていました。彼女達とはパワーアップ立ち上げ当初から協力しあっていたの。パワーアップにとって非常に重要なメンバーで、とても良い友人でもあったので、映画を制作すると決めた時、自然に私たちの所へ作品を提案してきたの。政治のことに関して無知でうぶな子がメイン・キャラクターで、ポリティカルな女性と出会う設定やエンディングはもう決まっていたんだけれど、それ以外はまだ白紙の状態だった。私たちはこの案がとても気に入って、脚本家を公募したの。ティナ・マブリとアビガイル・シャフランという二人のライターを選んだのが、2年半前のこと。ジェイミー、アンドレア、スティシー、私と、二人のライターのメンバーで毎月ミーティングを行い、彼女たちが書いた脚本を読んでその都度調整していった。1年間それの繰り返しだったわ。その間、スティシーと私は映画制作のための資金をパワーアップの関係で集めたりした。また、スタッフとアシスタントとなる生徒の呼びかけも行ったの。

パワーアップは、基本的にはプロダクション会社なんだけれど、教育的なカンパニーでもあるのよ。各映画制作で、指導者と生徒のプログラムが両立する様、努めているの。8人の生徒を選んで、午前中はスティシーが彼女たちに講義を行い、午後はプロダクション・クルーの手伝いをこなすといったスケジュールよ。また、監督の仕事を実際に見せるため、それぞれ最後の週は、一日ジェイミーに付きっきりだったの。

2006年初頭、4週間映画撮影を行い、ポスト・プロダクションに入った。私が全ての交渉を行い、「これ、無料で行ってくれないかしら?」、「これ、ただでくれる?」って色んな人に一生懸命頼んだのよ!

2月末に撮影を終え、9月までかかってフィルムを作成し、未編集の映画を10月に数多くの映画祭に送るといった過程を経たのよ。

――クルーの殆どがボランティアだそうだけれど。

そう、殆どがボランティアで、さらに殆どが女性。キー・ポジションの全てに女性を配し、メイン・キャストもオール女性なんてかなり衝撃的な状況よ!

Itty Bitty Titty Committee

――みんなレズビアン?

そうね…殆どそうかしら! エディターはストレートだけれど、他のレズビアン映画 『Chutney Popcorn』 でも編集をこなした。彼女はストレートなんだけれど、初めての映画の仕事は、レズビアン・ムービーだったのよ。優秀なエディターよ。また、電気関係の部門でも女性が働いていたんだけれども、これも画期的なこと。通常、この職種では女性を全く見かけないから。本当に良い仕事をしたわ!

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