映画監督ジェイミー・バビット、『IBTC』について

By Yuki Keiser July 2007


レズビアン映画/Itty Bitty Titty Committee

3. 私はポリティカルじゃなかった

Profile: Jamie Babbit
1970年生まれ、LA在住の映画監督。映画『Go!Go!チアーズ!』(99)、『The Quiet』(06)、『Itty Bitty Titty Committee』(07)や、数多くのテレビドラマを監督。中でも、『The L word』、『アグリー・ベティ』や『NIP/TUCK マイアミ整形外科医』などが有名。


――IBTCは、ベルリン映画祭のテディ賞にはノミネートに留まって、白人男性が多いと言われる映画祭『South by Southwest』では賞を獲得した。ゲリラ・ガールズは、白人男性の監督がいつも賞を総なめにしていることを批判しているわけだから、IBTCがそこで賞を得たなんて、皮肉よね。

その通り。本当に不思議だった! 未だに理解できないよ(笑)。

――この映画祭で賞を受賞した理由は何だと思う?

まず、IBTCで一番驚かされたのは、男性、とくにパンク男性がこの映画に共感してくれたこと。テキサス州オースティンあたりによくいるタイプで、映画やマンガ、パンク・ミュージックのオタクで、オルタナティブな人なのね。テキサスで育ったんだけれど、典型的なテキサスの人とは自分たちは違うと感じている。だから彼らにとっては、フェミニズムより、そのパンクなスピリットに共感したみたい。彼らは、映画で描かれている、社会へ反発するという姿勢に共感を示すわけだけれども、私としてはそのメッセージがフェミニズムより普遍的だったことに驚いたわ。良い意味で、本当にうれしかった。

――ジェイミーのインタビューで読んだんだけれど、ウーメン「women」ていう言葉を、「e」ではなくて、「y」で、「womyn」って書くって。「history」(歴史)を、「herstory」(his=彼の、her=彼女の)と言うのと同様、男性を表現する言葉が含まれているからだと思うんだけれど、日本の読者に説明してくれる?

(笑)。そうそう、「women」に、「men」という言葉が含まれているからよ。常にそのような変え言葉が念頭にある訳じゃないけれども、なるべく使うよう心がけている(笑)。微妙に見えても、言語は私たちに確実に影響を及ぼしていると思うから。気がつかないうちに、日常生活で影響をもたらしているのね。だから、言葉を変えるのは重要だと感じている。ゲイ運動のなかでも、「dyke」って言葉は当初完全に差別用語だったけれども、今ではみんな普通に使っているじゃない? 自分たちで使ったら、他人が使っても傷つかなくなる。それが言葉のエンパワメントね。性差別を、日常のどのレベルにおいても制圧するのが必要で、言語はその手段の第一歩だと思う。物事を変えるには、それが最も原理的な方法。わざわざそういった変え言葉しか使わない人ってユーモアがあると思うし、そういう人達をからかったりもする(笑)。ちょっとバカにするのも好きだったりね(笑)。

――IBTCでは、ジェニー・シミズ、ダニエラ・シーグィネヴィア・ターナーや、ディーク・エヴゲニコス、ローリン・モリカなど、リアル・レズビアンが多く登場するけれど。ジェイミーにとって、本当のレズビアンをキャスティングするのは重要だった?

リアル・レズビアンだと思える女性のキャスティングを重要視したの。だから、レズビアン役でも違和感のないストレートの役者にもオープンだったし。さらに、女優じゃない、ただのレズビアンも起用したかったのは事実。たとえばローリンは女優じゃなくて、本来はスケートボーダーなの。じつはマイスペースを通して彼女のことを知ったのね。JD (レ・ティグレ)のマイスペースのアカウントで見つけた。
 
 

レズビアン映画/Itty Bitty Titty Committee

左から2番目: ミート役、ディーク・エヴゲニコス 右端: アギー役、ローリン・モリカ
 

――二人は似ているよね。

そう。当初は、JDにその役をお願いしていたんだけれど、撮影がピーチズのツアーと同時期だったからスケジュールが合わなかった。だから彼女のマイスペースのフレンドリストにある写真を全てチェックしてみて、その中の何人かに会い、最終的にローリンを選んだ。彼女はLAに住んでいるし。ディークは、グィン(グィネヴィア・ターナー)の元カノだから知っていたんだけれど、才能ある女優だから起用した。ジェニー・シミズは、数年前からパワーアップなどのパーティでいつも会っているから知っていて頼んだの。とてもいい人よ。

――ジェイミーは『Go!Go!チアーズ!』では、メイン・キャラクターのメーガンに親近感を抱いていて、IBTCではアナのキャラクターに近いと聞いているけれど。二人とも、冒頭では自分に自信がなく、政治的な主張もあまり強くない子たちだけれども、そのうちタフで主義主張が強い女性へと変化していく人物だよね。その変化をジェイミーも経験したの?

アナと共通している点は、自分自身もずっとポリティカルじゃなかったところ。

――それはどうして?

母がポリティカルだったの。そんな政治的な母に反抗するため、自分はポリティカルじゃなかったんだと思う。政治的な女性はみんな母のように映っていたの。要はウザい女ね(笑)。

――どのエリアでお母さんはポリティカルだったの?

フェミニズムや、黒人の権利などのために闘っていたの。あと、同性愛の人権のためにもね。

――本当に!? それって、ジェイミーがレズビアンだと知る前から?

そうなの。母は、5回結婚をしていて、その夫たちの一人がじつはゲイだったの。彼は完璧な義父だったし、それでゲイの人権も意識していたんだと思う。だから、私にとっては、それらの活動は、母が行うようなウザいことだったの。でも、ライオット・ガールズ・ムーブメントに参加して、自分の母がやっているようなことだけじゃないんだって理解して、自分にふさわしい他の形でそういう活動をやれるんだって。まぁ、あと大学もね。日本では、フェミニズムの講義はあまりないと思うけれど。

――そうね、あっても一部のリベラルな大学だけだと思う。一般的な必修科目ではないね(笑)。

アメリカでは一般的なの。あと、レズビアンだったから、ポリティカルなグループに参加する興味を持ったのね。他のレズビアンも参加するだろうって分かっていたから(笑)。どちらかというと、ゲイ男性はゲイ・バーに行くけれど、女性はもっと複雑で、色んな政治団体に通う傾向があると思うのよね(笑)。個人的にはバーに行くより、政治的なグループや活動を通して人に出会う方が好きだわ。
 


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