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1. 最も関心が高かったのは海外メディア
Profile: 尾辻かな子
1974年大阪府出身。前大阪府議会議員。2003年4月、堺市選出の大阪府議会議員選挙で当選する。2005年8月に、著書『カミングアウト』を講談社で出版し、日本初の同性愛者としてカミングアウトした政治家となる。2007年5月、民主党が7月の参院選全国比例区で公認した。結果は落選してしまったが、同性愛者であることを公表して国政政党から国政選挙に出馬する初めての政治家ともなった。
www.otsuji-k.com
【リンク】 尾辻かな子氏 国政選挙出馬決定会見
【リンク】 尾辻かな子氏ロング・インタビュー
Profile: 松永尚三(まつなが なおみ)
慶応義塾大学文学部文学科大学院修了。現在、スイス・ジュネーブ州立大学文学部に勤務する側ら、小説や戯曲の数々の本を出版。99年、現代劇『無明長夜』にて、文化庁舞台芸術創作奨励賞佳作を受賞。 www.matsunaganaomi.com
今年5月、民主党が7月の参院選比例区で、前大阪府議の尾辻かな子氏を公認した。今回おしくも当選を逃したが、同性愛者であることを公表して国政政党から国政選挙に出馬する議員は尾辻氏が初めてということから、画期的な選挙となった。選挙後明らかになった、日本社会やLGBTならではの事情、海外との対比などを、尾辻氏と、今回尾辻氏の活動を支援し、ヨーロッパのLGBT事情にも詳しい作家の松永氏が分析を深めた。このファースト・トライから得られたものとは? 今後の課題とは? 新宿2丁目・尾辻事務所のソファでくつろぎながら、フランクなディスカッションをお届け!
--まず簡単に、お二人の出会いに関してご説明頂けますか?
松永(以下、M):
去年、ジュネーブでセクシュアル・マイノリティに対する国際会議(※ILGAこと、International Lesbian and Gay Association)があったんですが、そこに日本の代表として、尾辻さんと上川あやさんが参加されたんです。ジュネーブにはG.I.G(ゲイ・インターナショナル・グループ)というグループがあるのですが、そこに僕の友達でジュネーブ市会議委員のイーヴ・デマテイスがいて、彼も主催者の一人だったので、「尾辻さんを呼びたい」という話になり、尾辻さんに連絡したんですよね。そもそも、それが出会いのきっかけです。
--それでは、選挙活動に関してお二人にディスカッションしていただきたいと思います。まず今回の選挙の経緯について教えてください。
尾辻(以下、O):
そもそも、府議会議員の任期は四年間なので、私の場合2007年の4月で任期満了になりました。そのときに、府議会議員はとてもやり甲斐があるし、今後の課題もまだたくさんあるけれど、自分がレズビアンであるということをオープンにして政治に関わっていくには、これまでの地方議会、自治体でできることには限界があると感じたんです。それで次は、国会で法律をつくるほうに関わりたいって、考えていました。ちょうどそんなとき7月に参議院選挙があるということが分かっていたので、この機会に国政にチャレンジすることを決めたんです。で、もし国政にチャレンジするとしたら、どこからどういうかたちで出るのがベストかなと思ったときに、マイノリティ(少数者)が一議席を得ようと思ったら、やっぱり全国から薄く広く投票してもらえる全国比例じゃないと無理だろうなって。小選挙区の中では、得票がトップの候補者しか勝てませんからね。もちろん、小選挙区比例代表並立制ですから敗者復活はありますけれど。そんな選挙区では、同性愛者であること自体を問う選挙にはなりません。だからそういうマイノリティがマイノリティの主張をして、一議席を取れるのはやっぱり全国比例だな、と。で、私はそのとき無所属でしたから、じゃあどこから出たときに最も議席獲得に近く、自分も活動しやすいのかって考えたら…。政権交代可能なところから出馬して政策をつくるためには過半数以上の人が賛成してもらわなければならないわけです。そうなると、民主党じゃないかと。ちょうど民主党も、自民党に対抗するために、彼らの新自由主義ではなく、再分配、競争・効率一辺倒ではひずみがでる。もっと、公正や平等、また「共生していく」ことを考えるための政策をうちだしていましたから。それで2006年の5月に公募に応募しました。本当は2007年の年明けには公認がきまるだろうといわれていたのですが、民主党内でもライブドアの偽メール事件で、代表の前原氏が辞任したりと、ばたばたしていたことと、何より日本で国政政党が同性愛を公認するのはこれまで実例がなかったことで、最終的に公認が出たのは5月でした。そこから、二ヶ月間準備をして7月の選挙を迎えました。
M:
公認が出るの遅かったですよね。決まってからの準備期間はたったの二カ月しかなかったんですね。
O:
そうですね。たとえば労働組合から出る人達だと何年もかけて準備していくわけですからね。その点が難しかったのと、何よりうしろに大きな組織がない中で選挙に臨むのが大変でした。「どうやって票を固めるんだ」「どこから票を取ってくるんだ」っていうのがまったくないなかで、じゃあ二カ月の中で出来ることは何かと考えた時に、やはりマスコミに出るしかないという結論に達しました。
--マスコミの対応に関してはどのように感じました?
O:
悪くはないですね。朝日新聞はとても好意的な記事を全国紙に掲載してくれましたし。スポーツ新聞なんかは独自の色があるからちょっと茶化しては書きますけれど、でも下げるような書き方はしなかった。週刊誌でさえも真面目な記事を書いてましたよ。やっぱりオープンなレズビアンを茶化しようがないんでしょうね。なにより民主党から出ている候補だということもあってか、悪意のあるネガティブ・キャンペーンはとくにありませんでした。
M:
これは、僕は日本の社会にとってとても大事なことだと思ってるんです。初めて同性愛の人が公の立場でものを言って、大きな新聞などのメディアに取り上げられて、且つ、おかしなお笑いとかではなく、真面目に取り上げられてたということは、画期的なことですよね。
O:
また、日本のメディア以上にきっちり取り上げたのが、やはり海外メディアでしたね。外国特派員協会に呼ばれて、そこでスピーチしたんです。全国比例の候補が呼ばれることってめったにないんですよ。ある意味それが、民主党からの私のイメージも変えていったと思います。「こういう風に捉えられる候補なんだ、この人は」っていう。実際、AP通信、ロイター、CNNとか、いわゆるメジャーな通信社が取材に来ましたし、ほかにも、ル・モンドや、ガーディアン、イタリアのコルソ・デラ・セーラ、など世界中の大手新聞社などの取材が来たりだとか。日本メディアに比べてやはり海外メディア、とくに同性愛が権利として既に保障されている国の記者達は、人権問題としてこの問題に取り組んでいますから。日本では、朝日はある程度踏み込んで記事を書いてくれましたけれど、他のところはちょっとそこまでは…記者の意識的な部分でも難しいのかなぁ。先日、共同通信の論説委員が、今回民主党が癌患者の候補や障がい者の候補、性的マイノリティの候補といった、マイノリティ候補を多く出したことを評価する、っていう論説を書いていましたけれど。でもやっぱり海外メディアの方がすごかったですね。
M:
やはりヨーロッパ・西欧と、先進国ならではですよね。
O:
そうですね。すでにそういう経験があるし。だからそういう意味では、海外メディアは、保守的と言われる日本…その中でもより保守的と言われる政治の中で、同性愛者が出たことの意味を探ろうとしに来たっていう感じですね。
--選挙活動をしていくなかで、街の人達と触れ合ったりとか、直接会われたかと思うんですが、一般の方のリアクションはいかがでしたか?
O:
基本的に選挙は一般の人に嫌がられてますからねぇ(笑)、うるさいとか。いいイメージがないですから。日本って元々キリスト教文化ではないから、同性愛者であることで石投げられたりとか、「あなた達は地獄に堕ちるんだ」とか、そういうことは言われない(笑)。ただ、まぁボソっと何か言っていく人とかはいたけど、そこまで深刻なダメージになるようなネガティブなことっていうのは、ほとんどないですね。
M:
それはヨーロッパと全然違うところですよねぇ。
O:
逆に沈黙なんですよ。
--興味を持った方もいましたか?
O:
やっぱり多くの人が「レズビアン」という言葉に引っかかっていたみたいです。だって、街頭演説で普段は聞こえてこない言葉が、いきなりボーンと発せられたら、「何なんだ!?」っていうアイキャッチにはやっぱりなりましたね。
--みんな振り向くんですか(笑)?
O:
振り向きますね(笑)。 振り向くし、なんでわざわざ同性愛をオープンにして政治の場に出てきているのか、そのことと政治との関係がわからないっていう人もいたみたいですよ。
M:
そこが難しいところですよね。上川あやさんの選挙戦を手伝っていたときも思ったんですけれども、性同一性障害は今の日本の社会では、「病気」として認知されているんですよね。だけど、同性愛っていうと、あくまでも性的「嗜好」っていうか、その人の趣味の段階という捉え方で。日本は民主主義とはいえ、やはりヒューマニズムと人権というものが根付いてないんですよ。
--「ベットの中でしていること」のみとして捉えられているんですよね。
M:
そう。性的なことがすぐにイメージとして湧くんですよね、人権問題以前に。だから、日本の人達の意識、人権とは何かということや、人が人を愛するということはどういうことかっていう、根本的なことを、もう少し考えてくれないと、同性愛者だけではなかなか難しい。そういうところがヨーロッパとは違うんだなというのを、つくづく思いましたね。
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