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1. 編集者からの提案
Profile: やまじえびね
漫画家。東京在住。『スウィート・ラヴィン・ベイビー』、『インディゴ・ブルー』、『フリー・ソウル』 など数々の女の子同士のストーリーを舞台にした本を祥伝社 『FEEL YOUNG』 で執筆。2006年には、作品『LOVE MY LIFE』 が今宿麻美主演で映画化され、注目を集めた。 お買い求めご希望の方はこちら→ www.s-book.com
いまやレズビアンでは知らない人は少ないであろう、やまじえびね。これまでに4作品の女の子同士の恋愛ストーリーを出版、2006年には 『LOVE MY LIFE』 が映画化された。この映画は人気モデルの今宿麻美が主演したことでも話題を呼んだ。今回はそんな漫画家やまじえびねにインタビューを行った。彼女の作品は、同性愛に関するテーマを含んでいるにもかかわらず、ほとんどの書店に置かれている。そのシンプルで大人な恋愛やクールなタッチの絵、そして人間関係のリアルな描写は、日本に留まらず海外でも熱狂的なファンを持つ。とくにフランスでは、日本語から翻訳された初めての同性同士の恋愛ストーリーを描いているマンガということでも知られ、数々のメディアから絶賛される。 ここでは、やまじ氏がマンガ家になった経緯、インスピレーション源、映画 『LOVE MY LIFE』 の感想、アメリカのレズビアン・カルチャーなどについて話を聞いた。
――まず、マンガ家になった経緯を教えてください。
最初は、とくにマンガ家になりたかったわけではなくて、試しに描いてみたマンガを、プロの編集者から見てどのくらいの水準なのかが知りたくて、とりあえず雑誌に送ってみたんです。そしたら、編集長から電話が来て、「この作品は商業誌向けのマンガになっていないので評価できないけれども、担当付けますから勉強してみませんか?」って言われたんです。断る理由もないなぁと思って(笑)、「やってみます」って返事しました。それが高校二年の頃でしたね。原稿を見てもらいながら描いているうちに、賞に入るようになってデビューしました。
――試しに描こうと思ったその理由は何ですか? マンガを読むのが好きだったとか?
子どもの頃は大好きだったんですけれど、中学の後半頃からマンガよりロックにのめり込んで、マンガはあんまり読まなくなりました。ところが高校生になって、たまたま友達の家に遊びに行ったときに、あるマンガを発見しまして。高野文子さんの単行本 『絶対安全剃刀』 に収録されている短編だったんですが、それを見て何故か「コレだ!」って思っちゃったんです。別にマンガが描きたいわけでもマンガ家を目指しているわけでもなくて、なんとなくつまらない高校生活を過ごしていたわけですが、突然「コレだ!」と。それですぐ画材をそろえて、描きだしたっていうか(笑)。
――不思議なきっかけですね(笑)。ではいつ頃マンガ家になりたいと確信したんですか?
私マンガを描くのを一回辞めたことがあるんですよ。大学卒業後二年半くらいマンガはまったく描かずほとんど無職でした。とにかく何か仕事しなくちゃと動き出してから、自分にできることはマンガを描くことだけだと気づいたんです。そのとき初めてプロのマンガ家になろうと思いました。
――意外に遅かったんですね。それで、作品のストーリーのインスピレーションはどういうところから得ているんですか?
『LOVE MY LIFE』 のときは、アメリカのヤング・アダルト向けの小説家、フランチェスカ・リア・ブロックの、人気シリーズの1冊を、何気なく図書館で借りて読んでいたら、すごく気に入ったんですよ。とてもかわいい話だなと思って、アイディアがひらめきました。
――その作品もレズビアンの話だったんですか?
ゲイやレズビアン、若者や老人、いろんな人がごっちゃになって出てくるんです。みんな悩んだりもしているんだけれど、楽しそうにやっていて、読んでいてフレッシュな気分にさせられる本でした。セクシュアルマイノリティが分け隔てがなく、ふつうに存在しているよう描かれているんですよね。それを読み終わって、すぐに 『LOVE MY LIFE』 の原型がパーっとできたんですよ。それで描き始めたんです。
――テーマが、普段あまり読まない若干タブー的なテーマでもあると思うので、編集者側からなにか意見などありましたか?
実は、そもそも「女の子同士の恋愛ものを描いてみない?」という編集部の提案がきっかけで 『LOVE MY LIFE』 が生まれたんですよ(笑)。断筆後再びマンガを発表できるようになってから 『FEEL YOUNG』 で描く機会があって、そのときたまたま私は女の子同士のストーリーを描いていたという、そういう過去がありまして。
――それはなぜでしょう? 当時そのようなテーマが人気があったとか?
当時の記憶がほとんどないのですが、人気だから描くということは私はしませんから(笑)。『スウィート・ラヴィン・ベイビー』 っていう短編集の中に入っている 『美雪』 という作品なんですが、当時描いたもののなかでそれが一番評判が良かったということで、10年以上経って再び 『FEEL YOUNG』 で描く機会がめぐってきて、では何を描こうかというときに、またそういうものを描いてみませんか?となったんですよね。
――そのとき、読者から評判が良かった理由はいったいどうしてなんでしょう? ノンケのメインストリームの中で、女の子同士のストーリーなのに、評判が良いっていうのは興味深い点だと感じるのですが。
確かにそういわれるとそうですね。でもその辺はあまり詳しくは聞かなかったんですよね。ただ「あぁそうだったのか」っていうかんじで(笑)。『美雪』 のときは私自身があまり調子の良いときじゃなかったので、いい感じに描けていない気がしていたし、そういうストーリーを描いたことすら忘れてました。当時を振り返ってみると、たぶん…松浦理英子さんの小説 『ナチュラル・ウーマン』 に触発されたんじゃないでしょうか…。まあ、それならそれでせっかくの提案だしちょっと考えてみようかなって思ったんです。

copyright やまじえびね『スウィート・ラヴィン・ベイビー』/祥伝社フィールコミックス
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