フラッシュバック・レビュー 『Go! Go! チアーズ』

By Sen Ono September 2007


レズビアン映画/Go! Go! チアーズ

【ウィットの効いた笑いが随所に】

『Go! Go! チアーズ』
●監督/ジェイミー・バビット
●出演/ナターシャ・リオン、クレア・デュバル
●1999年、アメリカ映画
●ポニーキャニオン DVD ¥4,700

★ジェイミー・バビット監督のインタビューは、こちら

キュートさと鋭さをユーモアで包んだ、ジェイミー・バビット監督初長編作品! 


レズビアン映画/Go! Go! チアーズ
 
少しずつ惹かれあうメーガンとグレアム 


ベジタリアン、ロッカーに貼られたビキニ姿の女の子、ボーイフレンドがいるけれど彼とのキスは好きじゃない……これってレズビアンの証拠?
 
チアリーディングに夢中な女子高生メーガンの場合は、まったく自覚がないのに、これを理由に家族や恋人からレズビアンと断定され、更生施設に送られてしまう。タイトルやヴィジュアルがポップでスイートな学園コメディを連想させる『Go! Go! チアーズ』。でもメーガンの物語は、学校や競技会場の代わりに、彼女が不本意に訪れるはめになったこの奇妙な施設が舞台となる。

施設は、その名も「トゥルー・ダイレクションズ(=真実の道)」。ホモセクシュアルの子どもたちをストレートに更生させるための場所。ここに送り込まれた個性あふれる若き受難者たちと、厳格な創設者メアリーに取り囲まれたメーガンは、まもなく自分がレズビアンであることに気付いていく……ジェイミー・バビット監督がいちばん自分自身を投影しているキャラクターだというメーガンの「まさか私がレズビアンなんて!?」という当初の戸惑いや絶望、やがて事実を受け入れたうえで自分らしく生きていく心の機微が丁寧に描かれる。
 
そう、チアリーダーとはアメリカンドリームのもっともフェミニンな側面を象徴するアイコンであり、レズビアンのイメージからはもっとも遠いものと見なされている。メーガンも自分自身をフェミニンな女の子だと思っていたから、レズビアンだと自覚したときのショックはあまりに大きかったのだ。原題の『But I'm a Cheerleader』は、メーガンの「私はチアリーダーなのに、どうしてレズビアンなの?」という当惑の気持ちを表しているのだろう。
 

レズビアン映画/Go! Go! チアーズ
  アメリカンドリームのもっともフェミニンな側面を象徴するチアリーダーでもあるメーガン


でも彼女はやがてここで、初めてのほんとうの恋を経験することになる。メーガンがやってきたとき挑発するような態度で迎えた、クールで反抗的なレズビアンのグレアムとやがて心を通わせ、そして惹かれあう、きらめくような瞬間たち。このおかしな施設にひそかにかけられた魔法のように美しく、そして何とも皮肉な展開――バビット監督の語り口調はいつだってウィットにみちて、容赦なく辛口なのに明るくカラッとしている。メーガンがその大きな瞳いっぱいに困惑の表情を浮かべるさまも、とてもかわいいのだけれど、どことなくダサくて鈍くさいところが共感を誘いつつ何ともユーモラスで、作品そのもののトーンを明るく、軽快にする。
 
アイロニカルなのは舞台設定についても同じこと。ゲイ更生施設なんていう変なものを創作してしまうなんて、さすがバビット監督……と思っていたら、何とアメリカには本当にそんな施設が存在しているというからびっくり! そうした場所で尊重される、キリスト教的“正義”の行き過ぎた形を象徴するために用いられたのは、この施設を覆うブルーとピンク、人工的な性別のイメージ、プラスチックの花やつくりものの空。男の子はブルーの制服を着て車の修理や薪割り、女の子はピンクの制服で掃除や子育て……この空々しさに思わずクスッと笑った後、レズビアンやゲイ、ストレートの枠を超えて、ジェンダーって何? 正しい生き方ってどういうこと?とちょっと考えさせられてしまう。一方で、ゲイ・コミュニティの描き方でさえ、どこかわざとらしく典型的だったり、細部にいたるまでジョークが効いていて、見所いっぱいだ。正しいと信じられていることも少し引いて見ればこんなに滑稽なんだと教えてくれる。あくまでも笑いを通じて、人生そんなに深刻なことなんてないわ、と言わんばかりに。 


レズビアン映画/Go! Go! チアーズ
 
人工的な性別のイメージ。女の子はピンク、男の子はブルーの制服


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