『ヴォイス・オブ・ヘドウィグ』の監督、キャサリン・リントン

By Yuki Keiser August 2007


ヴォイス・オブ・ヘドウィグ

1. 自分探しの物語

●監督/キャサリン・リントン ●2006年、アメリカ ●配給・宣伝/アップリンク ●9月22日より、東京シネマライズX(T03-3464-0051)、大阪シネマート心斎橋(T06-6282-0815)にて公開中、ほか、全国順次公開。
詳細はこちら→ www.uplink.co.jp/voiceofhedwig

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Profile: Katherine Linton
1992年より、レズビアンとゲイのためのTVシリーズ『In the life』にプロデューサー、脚本家として参加。『The Out 100』(2006)、『Lesbian Sex and Sexuality』(2007)など、ジェンダーやセクシュアリティに関するTV番組の製作に関わる。本作は初監督作品となる。


熱狂的なファンを世界中に獲得したカルトムービー『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』や『ショートバス』の監督ジョン・キャメロン・ミッチェルと、音楽プロデューサー、クリス・スルサレンコなどが、NYの「ハーヴェイ・ミルク・ハイスクール」のためにチャリティ・アルバムを制作した。(※「ハーヴェイ・ミルク・ハイスクール」とは、2003年にLGBTQの少年・少女をいじめなどから守り、安心して授業が受けられるように開校された公立高校。この種の教育機関としては世界初、そして規模も最大である。)CDには、スリーター・キニーやシンディ・ローパー、オノ・ヨーコ、ヨ・ラ・テンゴなど、様々なジャンルの個性派ミュージシャンたちによる『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』サウンドトラックのカバー曲が収録されている。同映画ファンは絶対手に入れたいアルバムだ。
 

ヴォイス・オブ・ヘドウィグ
ジョン・キャメロン・ミッチェルとオノ・ヨーコ、レコーディング

『ヴォイス・オブ・ヘドウィグ』はそれらのミュージシャンたちやミッチェル監督を1年間にわたり撮影。また同校に通っている生徒4人もフィーチャーし、彼らの葛藤、自分探し、家族や周りとの人間関係などを繊細に映し出し、感動を与えてくれるドキュメンタリーに仕上がっている。

そんな『ヴォイス・オブ・ヘドウィグ』の監督キャサリン・リントンが来日し、話を伺うことができた。彼女は開口一番こう語った。「この映画は、何よりも子どもたちがメインなの。ここで描きたかったことは、“アウトサイダーとして生きること”。また、私にとってはこの映画はゲイ映画ではなくて、ゲイ/ストレート問わず、“自分自身の声を探す物語”。自分が誰かということを社会、学校や家庭で探す意味で」

監督本人はカミングアウトしているレズビアンである。高校の頃に自分のセクシュアリティに気づいていたが、当初はカミングアウトできなかったという。「その当時はメディアではゲイのイメージがなく、カミングアウトするのを恐れていたの。大学に入ってから周りにもそういう人たちがいることを知り、より安心した気持ちになれてアウトできるようになったわ」 
 

キャサリン・リントン
キャサリン・リントン監督
 
 
当時もしハーヴェイ・ミルク・ハイスクールに入っていたらもっと早くカミングアウトできたかもしれないとアピールしながらも、リントンはこう主張する。「決して見失ってはいけないのは、ハーヴェイ・ミルク・ハイスクールという場所は、社会の問題が蓄積された一つの結果だと思う。社会がセクシュアル・マイノリティを排斥したり、学校がその生徒たちを守ることができないというのは、現在の社会が病んでいる証なのよ。それで、この学校が必要されているというわけ。本来尊重されなくてはいけない“違い”や“多様性”だけれど、残念ながら現状はそうではない。だから、こうした学校が存在しなくてもいい社会が理想だと私は思っている」

映画には、アンチ・ゲイたちが新入生の登校初日に校舎の前で激しく抗議していたため、少年たちが警備員に見守られて登校するシーンがある。少年が学校に入ろうとしている中、憎しみの言葉を罵られているシーンはショッキングだが、それだけアメリカではゲイ憎悪が根強いのだ。しかしその一方でアンチ・ゲイとほぼ同人数で集まっていたゲイに好意的な人々が拍手とエールを送り、そのバッシングの声を消す映像には心が暖まる。

ヴォイス・オブ・ヘドウィグ
ベン・クウェラー
 

 

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