『ショートバス』の主演女優、スックイン・リー インタビュー

by Yuki Keiser June 2007


ショートバス

1. 自身の体験が役づくりへのヒントに

●監督/ジョン・キャメロン・ミッチェル ●主演/スックイン・リー、ポール・ドーソン、PJ・デボーイ
●2006年、アメリカ ●配給・宣伝/アスミック・エース ●8月25日(土)より渋谷シネマライズ(03-3464-0051)ほか全国順次ロードショー
詳細はこちら→ www.shortbus.jp

Profile: Sook-Yin Lee
カナダ生まれ。女優の仕事をこなしつつ、カナダの放送局のためにテレビとラジオの番組制作や司会を務めている。本作では、「Beautiful」という曲を作詞、作曲、演奏し、音楽才能も発揮している。


日本を始め、世界中で熱狂的なファンを持つカルト・ムービー『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』から5年、ジョン・キャメロン・ミッチェル監督待望の新作『ショートバス』が8月25日に上陸した。本作には、米レズビアン・シーンのアイコン的存在が多く登場するのも大きな見どころ。伝説のフェミニスト・パンクバンドレ・ティグレのJD、『The L word』でマックス役を務めるダニエラ・シー、シンガー・ソングライターのBITCHなど。そんな『ショートバス』の主演女優であるスックイン・リーへの、他では読めないクィアでフランクなインタビューをお届け!

メイン・キャラクターのソフィアは、カップル・カウンセラーで、様々なカップルの悩みを解決する一方、人には言えない秘密を抱えている。そしてひょんなことからニューヨークに実在するアンダーグランドなサロン「ショートバス」を訪れる。そのサロンには芸術家からSM女王、ストーカーや元NY市長まで、様々な背景の人物が交差している。愛の探求や人間の孤独など普遍的なテーマを扱ったこの映画には、ジェンダー、人種、性的指向を問わず誰もが共感できるはず。また、ユニークなワークショップ、即興的な演技、俳優達のキャラクター作りへの深い関わりや、全シーンのオーガズムが本物という斬新な撮影でも話題を集めた。 
 

ショートバス
 
 
――まず、あなたが演じているキャラクター、ソフィアの紹介をお願いします。

ソフィアは、映画の冒頭で崖っぷちにいる、人生と頭の中が忙しすぎる女性なの。彼女はセックス・セラピストで、幸せな結婚やキャリアの成功、全てを手に入れたい女性なんだけど、実は大きな秘密を持っている。人生で一度もオーガズムに達したことがなくて、それを失敗のように感じているので、夫とセックスをする度に感じているフリをしているの。切羽詰まっていて、そこからぬけるために、これから色々な行動をとらなければ行けない状態ね。

――この映画では、役者たち本人もキャラクター作りに深く関わったと聞いているのですが。あなた自身、ソフィアに親しみを感じていますか?

ええ、とても。彼女は、人間の最もぶざまな面を持っている人だと感じているわ。グラマラスじゃないし、厄介で恥ずかしい面、全てを併せ持った人ね(笑)。フィクションなキャラクターを作ったんだけれど、彼女の性格は自分と重ね合わせられて、共感できる人物につくり上げられたわ。

――どの辺が共感できるところですか?

私は、思春期の時、中国二世としてカナダ・バンクーバーに住んでいたの。当時、中国人の若者が周りにほとんどいなかったので、文化的にとても疎外感を感じていたのね。中国人でもなく、イギリス人でもないから。自分の周りから疎外感を感じていただけではなく、ある意味自分からも疎外感を感じていた。だから誰とも深い関係や付き合いは築けなくて、自分の身体にさえ違和感を感じていた。でも、しばらくしたら、自分の性を探索することができたの。当時、オーガズムへの達し方が分からなくて、「みんな誰かと付き合っているのに、私は一人でどうやったらオーガズムに達せるの? いったいどうしたらいいの?」という疑問を抱いていたの。それらがソフィアのキャラクター作りのインスピレーションの一部になったわけ。映画では、ティーンエイジャーじゃなくて大人の女性に設定を変え、監督のジョンと、彼女についていろいろ探索していくうちにあのキャラクターを作り上げていった。つまり、彼女の葛藤に共感できるし、数多くの友達に話を聞いてみても、女性にとってオーガズムに達成できなくて罪悪感を感じるのは結構一般的だということもわかったの。さらに、リサーチのため、何人もの著名なセックス・セラピスト達にも話をきいたの。そしたら多くが、自分の性生活に関して混乱していたから、この仕事に関わったことが判明したの。タブーなテーマだし、メディアはみんなが最高なセックスを堪能しているかのようなイメージを発信して、人々にプレッシャーを与えているのよ。本当はそんなことないのに(笑)。

――なるほど。ソフィアを演じるにあたって、難しいと感じたことがあったら、どの点ですか?

じつはかなりしんどい日もあったわ。ジョンに、「今日は彼女を演じられないわ! 彼女のことが好きじゃないの、ソフィアにうんざりしているのよ!」って愚痴った日もあったぐらい(笑)。そしたら彼は、「彼女についてそんな口をきくもんじゃないよ! 自分の作った人物に優しくしてあげなさい!」って言うのよ! 映画の他のキャラクターに比べて、ソフィアはすごく堅くてダサくてクールじゃないから、たまに本当にきつかったのよ(笑)。「彼女の洋服はマジ最悪だわ!」って思ったり(笑)、鏡を見ないようにして、「OK、この厄介な人を演じるのね」って割り切って一生懸命頑張った(笑)。 
 

ショートバス

主演女優のスックイン・リー
   
 
――(笑)。映画でのセックス・シーンは、本当にしていたそうだけれど。冒頭では、観客はソフィアがパートナーとオーガズムに達成していると信じるんだけれども、実は演じていたと後からわかる。そのシーンを演じたときは、あなたも「感じているフリ」をしていましたか、それとも本当に感じていました?

ソフィアが演じている時は、私もオーガズムのフリをしていたわ。シーンがその演技を必要としていたからね。それで、本物のオーガズムの時は、私もそうだった。3年間この人物をクリエイトして演じていたから、忠実に演じるのに力を入れたの。

――セックス・シーンを演じるのに抵抗はなかった?

ジョンは、「セックス・シーンで本当にセックスをしなくてもいいんだよ」って言ってくれたの。でも私にとって、リアルにするのが重要だった。ホテルで、カメラマンにベッドの上にカメラを設置するよう、お願いしたの。それでスタッフ全員に部屋を出るように頼んで、ジョンだけは残ってもいいことにしたの。それでも、ジョンに「部屋から出て、バスルームから監督しくれる?」ってリクエストした(笑)。で、ヴァイブレーターを使ったわけ。オーガズムに達成する瞬間を捉えるのが私にとっては重要だったのね。その感覚が自由の象徴だと思うから。思想の自由、批判からの解放、感じる自由、自分自身を感じる自由などね。それらを私の顔に反映するために、顔だけを映すショットにする様に、スタッフにお願いしたの。最終的には、やっぱりジョンにも部屋を出るように言って、最後はもう誰もいなくて(笑)、一人で演じたの。 
 

ショートバス

ソフィアと夫のロブ

 
――どうしてソフィアはオーガズムに達成できたと思いますか?

今まで感じていたプレッシャーを取り払って、自分自身に厳しくなくなったからだと思う。で、その解放が自分自身や自分の弱さを受け入れ、恥ずかしい面や失敗など全てを受け止め、配慮することを許せたんだと思う。   
 

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