『中国の植物学者の娘たち』の監督、ダイ・シージエ

By Yuki Keiser October 2007


『中国の植物学者の娘たち』

1. ストーリーは、愛する権利が奪われること

●12月15日(土) より 東劇 ほか、全国ロードショー
公式HP: www.astaire.co.jp/shokubutsu 
 
Profile: Dai Sijie
1954年、中国・福建省生まれ。84年に政府給費留学生として、パリ高等映画学院IDEHCに入学。以降、フランスに在住。89年、長編第一作目『中国、わがいたみ』がカンヌ映画祭に出品、ジャン・ヴィゴ賞受賞。「バルザックと小さな中国のお針子」(00年)で作家デビューし、フランスでベストセラーに。02年に映画『小さな中国のお針子』がゴールデン・グローブ賞外国語映画賞にノミネートされ、06年には最新作『中国の植物学者の娘たち』がモントリオール世界映画祭 最優秀芸術貢献賞・観客賞を受賞。 
 

『中国の植物学者の娘たち』

右: ミン、教授とアン

 
『小さな中国のお針子』で文化大革命時代の青春を描いたダイ・シージエ監督は今回、幻想を誘う深い緑の植物園を背景に、ふたりの女性の儚げな純愛を繊細かつドラマティックに表現した。

ストーリーは、中国の孤児院で育ったミンが植物学者、チェン教授の植物園に実習生として住み込みに来る。教授の元で暮らすその娘アンと出会い自然に心が惹かれてゆくが、やがて中国では許されない恋愛へと発展する…。

この作品は、ふたりの女性の恋愛物語を描いているが、いわゆるレズビアンにフォーカスした、“レズビアン映画”ではない。ダイ・シージエ監督いわく、「どこにでもいつの時代にでもある愛の物語で、愛する権利を奪われることがテーマ。美しい恋愛物語が食い止められ、悲劇に変わってしまった。この作品は非難であり、悲鳴だ。」

また、女性同士の悲劇的な恋愛物語は当事者の間では批判されることもあるが、このストーリーは実話に基づいており、中国の同性愛者への厳しい境遇を反映しているのも事実。そういった意味でもこの作品は、ふだん当サイトで紹介しているクィア映画とはひと味違うが、忘れてはいけないのは監督が強調するように、「同性愛の事情を描くのが目的ではなく、あくまでもアート作品」ということである。その美しい映像や、神秘的な緑の世界、繊細な視点、女優たちの豊かな表現力がスクリーンを輝かせ、誰もが魅了される作品なのは確実だろう。
 

『中国の植物学者の娘たち』

アン役・女優のリー・シャラオン(左)とダイ・シージエ監督

中国ではタブーなテーマである同性恋愛を扱ったため、同国での撮影許可及び上映が拒否され、皮肉にもヒロインたちが痛感する“表現の自由の妨げ”が監督自身の経験に重なる。映画のほかにも、執筆活動を行なうシージエは、ベストセラーを生み出したり数々の賞を受賞しているのにもかかわらず、中国では彼の作品はいまだひとつも発表されることが許されていない。さらに、94年より出入りこそ自由になったが、それまでの数年間は母国への入国が禁止されていたという。監督はまさに自由の妨げを痛いほど味わっているのだ。

そんな監督は映画のプロモーションはほとんどしないそう。だが、大の日本好きと、多くの友人がいることもあり、今回の来日が実現した。映画のインスピレーションや、中国の事情などについて話を伺った。

(※このインタビューは映画の内容について触れています。まだ観ていない人はご注意ください。)
 

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