NHK『ハートをつなごう』<ゲイ・レズビアン 第一弾>

By Yuki Keiser April 2008


NHK ハートをつなごう

7. 『カミングアウト・レターズ』 [pt2]

――『カミングアウト・レターズ』を制作しようと思った理由ときっかけは何でしたか?

じつは7-8年前から、「カミングアウトするときに渡しやすい本があるといいな」、と思っていたんです。僕と同じHIV活動をしているRYOJIさんとある日お茶を飲んだとき、彼も、教師と元教え子のお手紙が掲載されている本があるといいなと思っていて、その部分で考えが一致したんです。

――参加者はどのように選んだのですか? 基準などはどのように? また、公募したのでしょうか?

選出は難しかったですね。まずひとつは、読み手が特別な人と感じないように、なるべくあまりゲイメディアに出ていない人にお願いしたかったんです。また、公募すると人を落とさなければいけないことになるので、その方法は避けて個人のつてで探しました。レズビアンは、二組しか見つからなかったのですが、年齢幅がある二組だったので、それは良いかなと思いました。

――実際に、当事者の手紙だけではなく、親の手紙も掲載されているアイディアが面白いと思い、感動しました。そのアイディアはどこから得られましたか? また、教師の手紙もとても興味深かったですが。

RYOJIさんが元々教師から手紙をもらうというアイディアを持っていたんです。ある意味、教師は権威がある存在なので、教師がゲイやレズビアンを肯定的に語る言葉を提示することで、世間一般にゲイやレズビアンがより広く受け入れられやすいきっかけをつくれるかなと考えたようです。返事を掲載するヒントは、多分HIV活動からだと思います。HIV陽性者やその周りの人が書いた手紙を朗読する会などがあるのですが、そういったところからイメージがきたんだと思います。

――教育関係者の知識を深めるために、学校にこの本を送られる予定はありますか?

はい、あります。じつは昨年、僕の親友が亡くなったんです。それで彼のパートナーが遺産の一部を本の購入に当てて図書館に送りたいと話してくれたんです。日本中の図書館に送るのは不可能ですので、どこに絞るかを相談したときに、「不登校の生徒たちが通うフリースクールはどうかな」と。そういう不登校の子の中にはLGBTが多いので、そこが良いんじゃないかなと考えました。

――何冊ほど送られる予定ですか?

150冊ほど送る予定です。

――当事者のご両親たちの手紙を読んで、ご感想はいかがでしたか?  

すごく力づけられましたね。じつは手紙が揃う前に、「LGBTの家族と友人をつなぐ会」の座談会を行ったんです。そのとき、親たちの話を聞くだけで泣けてきて、何でなんだろうなと思っていたんです。NHKの『ハートをつなごう』の収録でも話に出たんですが、他の当事者の親からの受け入れられる言葉は、自分の親に言ってもらえているみたいな感じなんですよね。だから手紙を読んで、親に応援してもらえるような気持ちになれたのは本当に力強かったです。

――本を編集するにあたって、カミングアウトに関して考え方が変わりましたか?

1年弱かけて編集を行いましたが、それまではきっと、カミングアウトされる側に正しい知識があるかないかで結果が決まるだろうと思っていたんです。でも、編集を続けるうち、じつはそうではないんだなと感じ始めました。もちろん、正しい知識があったほうが理解しやすい部分もありますが、それが受け入れるための絶対に必要な条件とは限らないとわかりました。行き着くところは、「自分の子ども」ということなんだと思うんです。言われたときには反発したり抵抗があるかもしれませんが、時間が経つと消化されることもあるんだなって思いましたね。「カミングアウトは一回きりで終らない」とよく言いますが、本当にそうだと実感しました。最初は拒絶されても、しばらく経ってまた話をすると受け入れられるケースも少なくないですね。ただ、受け入れる側が、「性的指向を変えられると思っているか、思っていないか」は決定的かもしれないです。多分、変えられないと知っていたら、受け入れるのに時間がかかってもある意味諦めざるを得ない。変えられると思ったら、なんとしても変えて欲しいと思ってしまうわけですよね。そこだけは重要かもしれないですけれど。

――砂川さんから見て日本では、母親と父親の受け止め方の違いはありますか? 最初にカミングアウトするのはどちらという傾向がありますか?

父親と母親を比較すると、母親は自分の子どもがこうなったのは自分の責任と思ってしまうみたいです。逆に父親のほうが少し客観的というか。また、初めにカミングアウトするのは、母親のほうが多いと感じています。

――日本では、ゲイ・レズビアン=子どもを持たないというとらえ方なのですが、欧米では人工授精で子どもを産んでいる同性カップルが最近増えてきています。それについてはどのようにお考えですか?

とっても難しい質問だと思っています。もちろん、異性愛のカップルが人工授精を行うのなら、同性カップルも行っても良いと思うんですよ。ただ、同性カップルと言っても、レズビアンカップルとゲイカップルは状況がまた違いますよね。ゲイカップルの場合は、代理母の問題が出てきて、それは「女性を産む機械化してしまう可能性がある」というジェンダーの問題も関わってくるので。当事者が納得して契約的に産む、または3人で育てるなどなら良いとも考えられるかもしれませんが、それでも複雑な問題を多く抱えていると思います。レズビアンカップルでは、どっちかが産むのだったら、出産に伴う危険性も自分で引き受けるわけですし、人工授精がかなり多くおこなわれている今、ヘテロと同じ基準で良いんじゃないかなと思います。

――砂川さんは子どもが欲しいと思っていますか?

僕にとっては、「自分のDNAを残したい」という気持ちは全くないので、子どもが欲しかったら養子をとりたいと思います。ただ、日本ではゲイカップルは養子をとれないので難しいですね。

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