新作映画『サガン ―悲しみよ こんにちは―』

By Hisako Kondou


『サガン』

2.晩年の恋人はファッション誌の女性編集長

クィアな交流のなかでも一番濃かったのは、間違いなくサガンの一番の親友であり生涯最後の恋人となったファッション誌『ELLE』の元編集長、ペギー・ロッシュ。ペギーはモデル/スタイリストとして活躍していたこともあり、最終的には自身のファッション・ブランドを立ち上げるなど、アクティブで才気あふれる女性だった。サガンの2番目の夫がボーイフレンドを作って結婚生活が破局を迎えたときに、偶然ペギーと再会。ふたりはすっかり意気投合し、数日後には一緒に暮らし始めた。才能豊かで自由奔放な生活を好む自立した大人の女性同士が惹かれあったのは無理もない。ソウルメイトとしてお互いを認めあい支えあいながらも束縛しない関係が続くが、ペギーがガンでサガンよりも先に亡くなるという壮絶な最期だった。人付き合いが得意ではないサガンを残して死ななければならないペギーの不安や、サガンの「私を残して逝かないで」というペギーへの悲痛の叫びが胸を打つ。ペギー亡き後のサガンの悲嘆ぶりからは、やはりサガンの生涯のソウルメイトがペギーであったのだということが切々と伝わってくる。

また、本作を撮ったディアーヌ・キュリス監督は、とくに描きたかった部分についてインタビューで次のようにコメントしている。「私が一番心を動かされたのは、サガンとペギーのラブストリーです。彼女たちは破天荒で、社会の常識からは逸脱しているかもしれないけれど、その恋愛には心動かされます。自由を心から愛し、ユニークな彼女たちの生活に楽しい気分にもなれます」と、サガンとペギーの生き方と恋愛に重点を置いていたと語った。

そんなキュリス監督は、既に1983年に『女ともだち』という、フランス戦後のふたりの女性の強い絆を描いたレズビアン要素の高い映画を発表。本作と同じように直接的なラブシーンはないものの、敬愛あふれる抱擁やお互いの熱い視線から、想い合う女性ふたりの精神的な繋がりを繊細に浮き彫りにした。また、94年に発表した『彼女たちの関係』では、レズビアンを思わせる姉妹の愛憎劇をスリリングに描いて話題に。原題が“熱烈に”という意味を持つ本作では、個性派女優のベアトリス・ダルとアンヌ・パリローを主演に迎え、微妙な関係にある女性ふたりによって生み出される緊張感漂う世界観を残酷なまでに描き出すなど、以前からフェミニストでレズビアンフレンドリーな女性監督として知られているのだ。

フランソワーズ・サガン
(C)2008 ALEXANDRE FILMS / E. George

クィア的に気になるキャスティングについては、ジャック・シャゾ役演じるフランスの超有名コメディアン兼俳優のピエール・パルマード。彼は、女性シンガー、ヴェロニック・サンソンとの6年来の結婚に終止符を打った後、昨年ゲイとしてカミングアウトしフランスで大きな話題を集めた。

フランソワーズ・サガン
(C)2008 ALEXANDRE FILMS / E. George
※昨年、ゲイとしてカミングアウトしたフランスの超有名コメディア兼俳優のピエール・パルマード(右)は同じくゲイで、オペラ=コミック劇場のダンサー、ジャック・シャゾの役を好演。シャゾはサガンのソウルメイトと言われるほどの仲良しとして知られる。


また、劇中のサガンのファッションは当時のサガンの写真をもとに衣装が作られたことにも注目したい。サガンはまだまだコンサバなファッションを女性が好んでいた50年代に、既にマニッシュでシンプルな水兵のセーターに当時まだ女性のものではなかったジーンズをはいていたのだ。ほかにもショートカットやヒョウ柄のコートなど、20年もあとに大流行するファッションを誰よりもいち早く取り入れていたというのも興味深い。サガンは恋愛やライフスタイルにおいてだけでなく、ファッションも常に奔放でセクシュアリティやジェンダーの固定概念にとらわれていなかったのだ。そんな前衛的でイキな女性、フランソワーズ・サガンのモダンでタフな生き様をもっと知りたい人は、是非映画館でチェックを!

フランソワーズ・サガン
(C)2008 ALEXANDRE FILMS / E. George


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