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2.幸せの方向に向けていくヒマワリ
――話を小説に戻しますが、主人公がゲイでボクサーという設定の章「サンフラワー」は、小説の一番最後に登場します。それはやっぱり前田さんが一番思い入れのあるストーリーだからでしょうか?
そうですね。読者も僕がゲイということを知っているから、象徴的にしているんだろうなと思いながら読んでもらいたくて、最後にしました。言いたいことがわかりますかね(笑)?
――たぶんわかると思います(笑)。一番最後ということで、締めとしても重要な場所で、また、余韻が一番残るということでもありますよね?
そう、読み終わった後に名前を見て、「あっ、前田健が書いたんだな」ってもう1回思うだろうなということも考えて。
――お笑いの世界はボクシングの世界と同様に、マッチョな男っぽい世界ですよね。そういった男社会でゲイとして生きるボクサーのストーリーは、前田さんのご経験から着想を得ていますか?
そうですね、お笑いは男社会ですよね。僕からするとボクシングは、裸の殴り合いということからも、一番ゲイ的感覚ではないスポーツなんですよ。だからあえて、そういう設定にしてみたんですね。また、ボクシングのストイックさや孤独感を、比喩としても重ねてみたかったんです。
――その章にサンフラワー(ヒマワリ)という花の名前を選んだ理由は?
天然で咲いているヒマワリは、太陽の方向を向いて動くと言いますよね。それで、「幸せの方向にせめて足の先だけでも向けていたい」という健気な気持ちを花にたとえたんです。
――「サンフラワー」のなかで、“恋は判定負けよりKO負けのほうがすっきりするよ”というフレーズが登場するんですけれど、それはご自身のお考えでもありますか? 前田さんは、当たって砕けるタイプ?
はい。いままで、ストレートの方を好きになることが多かったので。諦めるためにも告白するところもあって。だから負けるのがわかっていても、KO負けしてすっきりして、次の恋に行けるためにも告白する、と。告白しないままだと無かったことにされてしまいそうで、意地になって告白していた若い頃もありました。
――いままで、ゲイの方よりストレートの方に恋したことが多かった理由は何だと思いますか?
憧れかなぁ。自分に無いものを持っているからかな。ゲイの方たちとは色々と共感もするし、そうだよねって同調はできるんだけれど、お姉さんや妹としゃべっているような気持ちになるところがあって。自分にとっての異性、いわば恋愛対象は、ノンケの男性だったんですよね。って過去形みたいに言っていますけれど、いまでもついついノンケの方を好きになったりするんですけれど(笑)。
だってさ、無理だから諦めるとか、行けそうだから頑張るって、ちょっと計算している感じがしません(笑)? ひとりのときに誰と会いたいかを思い浮かべたときに、その人が一番好きなんじゃないかなって思うんですよね。
――「リリー」のなかで、エーセクシュアル(=セクシュアリティ問わず、性欲を持っていない人)の女性とゲイ男性の友情結婚・プラトニック恋愛も描かれているんですけれども、前田さんもストレートの女性やレズビアンとそういった形の結婚やプラトニックな恋愛はアリですか?
子どもは欲しいなと思っているので、そういう縁だったり、そういう人とめぐりあえれば、アリかなと思いますね。ただ、そんな経験はしたことがないので、どっちも惨めな気持ちにならないように暮らしていけるのかな、という疑問はありますけど。両方共に、それぞれ恋人がいればいいですけれど、どっちかが忙しくてどっちかが家にばっかりいたりなどすると、惨めにならないのかな。あなたはどうなの?
――私は元々ゲイ男性がとても好きなので、彼女がいない限り、恋愛感情も含めたプラトニックな形で付き合えると思います。もちろん、向こうがよければの話ですが(笑)。ま、でもやっぱり好きな女性がいたら、なさそうな気がしますけれどね。
そうですよね。アリではあるけれど、ナシにしていないだけで。バランスですからね。
――次回作の構想はもう練っていますか?
はい。1作目はセクシュアル・マイノリティをテーマに書いたので、次は逆に一般の男女の恋愛を僕が書いたらどうなるかを想像しています。僕から見た男女のカップルの、“こんな簡単なことができないのかな”というような視点も含めて書いてみたいなと思っていますね。
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