大塚隆史さんのインタビュー

By Yuki Keiser


大塚隆史

1.自分にとって一番大事なパートナーシップ

ゲイとしてカミングアウトしている造形作家/ライター/編集者の大塚隆史さんの最新作、『二人で生きる技術──幸せになるためのパートナーシップ』(ポット出版)。大塚さんの具体的な体験談を挙げながら、二人が一緒にいるために必要な「技術」や、自身の「幸せになるためのパートナーシップ論」を提案しているこの本は、感動的なエピソードが満載で、日本のゲイ男性の生活をユーモアを交えながらも真摯に描いている。

パートナーとの心温まるエピソードやしんみりするストーリーも、その自然体でリアルな描き方から、ゲイに限らず誰もが共感できるのでは。本を読み終わっても、そのまっすぐ突き刺さる言葉が余韻を残し、パートナーシップや同棲、恋愛などに賛同しなくとも、関係性について静かに考えさせてくれるような貴重な作品なのだ。まさに一家に1冊は置いておくべき本!

また、関係性のみならず、当時のゲイリブやゲイカルチャーについても著者のパッションが伝わる、あらゆる面で読み応えのある内容に仕上がっている。そんな、人生に対して情熱溢れる大塚さんに直撃インタビューを実施。明るくてアットホームな雰囲気が魅力として知られる自身のバー、タックスノットで、本が出版された経緯や、パートナーシップ、日本のゲイカップルが行う養子縁組、30年前の2丁目、セックスレスの関係などについてフランクに語ってもらった。

大塚隆史
※『二人で生きる技術──幸せになるためのパートナーシップ』(ポット出版)を執筆した大塚隆史さん。自身のバー、タックスノットにてインタビュー。

――大塚さんはこれまでに本の執筆や編集を数々されてきたんですが、最近出版された著書『二人で生きる技術──幸せになるためのパートナーシップ』(ポット出版)はとてもパーソナルな内容も含まれていて、とても読み応えのある内容だと感じました。この本を書こうと思った動機は?

ある出版社の編集者からお手紙をもらったのがきっかけなんです。その編集者はゲイで、以前『Queer Japan Returns』(ポット出版)で書いていた僕の文章を読んでいてくれて、一緒に仕事がしたいというお手紙を頂いたんです。

彼の要望としては、ゲイやレズビアンについて書きながらも、ストレートの方たちにもアピールできる作品を作りたいということでした。僕自身も『二丁目からウロコ』(翔泳社)という本を執筆してから13年も経っていたので、ちょうどまた何か書きたいなという気持ちになってきていたところだったんです。『二丁目からウロコ』では色んな分野のトピックを取り上げていたので、今回は自分にとって一番大事なパートナーシップについての本を書きたいなと思いました。それで、ストレートの方に向けても伝わるような形でパートナーシップについて書こうと企画を始めたんです。

――『二人で生きる技術』を読むと、大塚さんにとって、どれだけパートナーシップが重要なのかが伝わります。このテーマについてずっと以前から書きたいと思っていたのですか?

そうですね。ゲイ雑誌『バディ』で約10年間ゲイのカップルのインタビュー記事を連載していたのですが、小さいコーナーでしたので、いつも言い足りない気持ちがあったんです。それで、いつかまとめて書いてみたいなと思っていました。

――この本で興味深いと感じたのは、パートナーシップについてはもちろんですけれども、それ以外にも大塚さんのゲイとしてのこれまでの経験も色々と書いてあるところです。たとえば、初めて2丁目に行かれたことも書いてあって、この街が30年間でどれだけ変わったかもわかって面白いです。改めて振り返って、現在の2丁目は、どのように見えますか?

最近の2丁目は、以前と比較して敷居が低くなった気がします。30年前は、高い敷居をまたげるようなモチベーションのある人がやっとの思いで2丁目に来ていたわけですから、ある種濃い状態だったと思うんですよ。でもいまは、「何となく行ってみようかな」という気持ちで来ている人も多くなってきたので、その分だけでも全体的に薄まった感じがします。ある意味、“普通の”感じの人たちが多くなってきたんじゃないでしょうか。

また、時代の流れでゲイやレズビアンが社会的に受け入れられやすくなっているので、そういった意味でも薄くなったと思います。以前は、ゲイバーに来ている人は変な人たちばかりなんだなと思っていたくらいです。自分も含めてなんですけど(笑)。

――変な人って、どういう人なんですか(笑)?

「日本の一般の社会でやっていくのは大変だろうな」と思うような個性を持っている人。いま、2丁目に来ている人たちは、一般社会にいても全然おかしくないような人たちが圧倒的に多いですけれど、当時は強烈な個性を持った人が多かった。はみ出し感がある人って言ったらいいんでしょうか、そういう人たちって、こういう所に来てやっとホッとできるというのもあったと思います。

多分昔は、社会にどこか順応できていないという思いがあって、少し屈折している人が多かったんですよ。それでこういう所に来ると屈折していたものがバーンと爆発するから、いじめているのか会話を楽しんでいるのかわからない感じ(笑)。2丁目で会話をするときは、言葉で痛めつけ合いながら楽しんでいる、みたいな傾向が多かったように感じる。でもいまはもう普通の会話ですよね。大きく言って、印象としてそれが一番違うのかな。

――また、当時とくに2丁目が昼の生活と切り離されていることについての指摘も、興味深かったです。

そうですね。誰が誰と寝たということはみんな知っているのに、その人が昼間何をしているのかは誰も知らないという不思議な環境でしたね。自分は幸せになりたくて2丁目に来たのに、それでは幸せになれる気はしなかったんですよ。当時はそれが不満でしたね。


大塚隆史
タイトル/二人で生きる技術  幸せになるためのパートナーシップ
著者/大塚隆史
カバー写真/森栄喜
価格/ 2,310円(税込)
出版社/ポット出版
発行/2009年10月29日
ISBN978-4-7808-0135-4 C0095

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