大塚隆史さんのインタビュー

By Yuki Keiser


大塚隆史

2.日本のゲイについての情報は

――90年代初頭に別冊宝島で、『ゲイの贈り物』、『ゲイのおもちゃ箱』など、ゲイカルチャーについての本を編集されましたよね。当時ゲイについてそんなに肯定的な情報が無かったと思うので、そういった意味でもこの本は画期的だったと思うんですが、出版した経緯について教えていただけますか?

当時は全体的に追い風が吹いていた時代で、ゲイブームと言われているものがあったんですよ。あの本は、(評論家・作家の)伏見憲明さんと写真家の白坂ビンさんに最初宝島社からオファーが入って、後から僕も加わったんです。その当時タックスノットをもう始めていて、才能を持っているゲイが沢山いて面白いな、何かできないかなとちょうど思っていたんです。それで、ここに来ているお客さんや知り合いにたくさん参加してもらって、ああいう本ができあがったんです。

――その当時はゲイカルチャーについて、どのように感じていましたか?

ゲイについて肯定的な情報がなかった時期もあれば、いわばその逆もあって、たとえば「ゲイの人って才能あるんでしょう、新時代の人間よね」みたいな、こっちが聞いていても気持ち悪くなるようなものもあったんです。それって結局差別の裏返しでしょ? そうではなくて、もっと普通に楽しく生きているゲイやレズビアンの情報が伝えられないのかなと思っていたんです。あの本の制作に関わった人たちはその気持ちを共有していて、だからああいう形になったんだと思います。

また、僕は表紙も手がけさせてもらったんですが、当時僕はああいうカラフルな作品を作っていたので、ああいったテイストに仕上がりました。いま思うと、普通に楽しくて明るい感じを伝えたい気持ちがあの表紙によく現れていると思いますね。

――ゲイカルチャーについて、一般のメディアで読む機会がとても少ないので、その本でゲイ映画のリストやレビューが一挙掲載されているのもとても面白いですね。

その点では、(元『ファビュラス』編集長でドラァグクイーンの)マーガレットさんこと小倉さんがとても重要な役を果たしたんですよ。それまではみんなが思っていたことを言える機会が無かったから、あの本には何もかも込めようという気持ちだったので、濃い一冊に仕上がっているんじゃないかな。

大塚隆史

――40年間ほど前から日本のゲイシーンやメディアのゲイの取り上げ方などを間近で見てきた大塚さんからして、最近のクィアが置かれている日本の状況ついてはどう思いますか? たとえば、最近ゲイについての情報がメインストリームのメディアで増えていると思うんですけれど、それらをどのように捉えていますか?

さっきも触れたように、最近“普通の人”がたくさん2丁目に来て、いわゆる“普通”になってきている感じがする反面、日本でノンケ・メディアにゲイやレズビアンが取り上げられるのは、相変わらずほとんど外国のことなんですよね。僕がよく知っているような日本人のゲイについての情報は、メインストリームではほとんど流れていないんですよ。それは、日本でカミングアウトしている人がまだ少ないことにも関係していると思うですけどね。取材される人が顔出せなくて名前も出せないというと、多分どうしても取り上げにくいんでしょうね。

でもカミングアウトの問題って、いま少し複雑になっていると思うんですね。以前は単純に、「カミングアウトしよう! 世の中にどんどん出て行くと、僕たちの明るい未来につながっていくんだ!」というムードがあったんですよ。でもいまは、セクシュアリティを自認することそのものもおかしい、みたいな言説も出てきているなかで、そんなに簡単には言えなくなっている。
そして、カミングアウトしなきゃいけないプレッシャーが人を苦しめているんじゃないかとも言われている。だから、難しいところにきちゃっている感じはするんですよ。

上手く言えるかどうかわからないけれど、単純にひとつのライン上を進むように進化している形から、もっと複雑な状態に入ったのかなという気がするんです。どちらにしろ、僕たちが昼間会っているような、一般的な日本のゲイの友達の姿は全然知られていないと思う。日本のドキュメンタリーなんかでも、まだ特殊な人として取り上げられていることが多いような気がするんですね。

――そうですね、比較的特殊なイメージですよね。そういったテレビ番組やドキュメンタリーなどで、日本ではまだゲイやレズビアンが出るときに一部が顔を出さないで、モザイクを入れている状態で出ていると思うんですけども、それに関してはどう思いますか?

出せない人の事情もよくわかるし、出せないことは仕方がないという思いもあるんです。その一方で、そういった方たちって、顔を隠したり声を変えたりしつつも、番組ではとても良いことを言っている場合が多いんですよ。だから普通に顔を出して話してたら、どんなにその言葉が伝わるだろうかと思うと、少し歯がゆい感じがするかな。

この本にも書いてあるけどれも、僕はやっぱりアメリカのゲイリブの洗礼を受けたので、カミングアウトはとても大事なことだと思っているんですよ。社会と関わろうとしたときには出発点だと思っているから、その点では少し残念かもしれないかな。

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