大塚隆史さんのインタビュー

By Yuki Keiser


大塚隆史

5.間違っているのは世の中!

――いま、カミングアウトしようかしまいか悩んでいる読者がいた場合に、何かアドバイスはありますか?

最終的には、その人が自分の判断でカミングアウトするかしないかを決めることがとても大事だから、その判断は尊重したいと思う。でもカミングアウトして生きていけるようになると、本当に人生をシンプルに楽しんでいけるようになると思う。人間関係も、カミングアウトしているときのほうが素敵なものを持てる気がするし。だから、「カミングアウトすると、良いことがたくさんあるんですよ」と言っておきたい。

――『二人で生きる技術』で、伊勢丹写真館での出来事がとても面白かったです。そこまで堂々と言う人はすごいですね(笑)!(※大塚さんが年下の恋人と伊勢丹写真館で写真撮影をしに行ったとき、カメラマンに親子と間違われ、「カップルですので、そのように撮っていただけますか」とリクエストをした出来事。)

(笑)あれは僕にとって重要なことだったから。だって、まだ彼との関係がどうなっていくのかわからなくて、こういった記念の写真を撮ることで一里塚みたいなものをひとつずつ置いていけるのかもと思っていたときだから。それなのに、出来上がった写真がお父さんと子どもみたいに撮られていたら、許せないじゃない(笑)。そしたら案の定、「お父様はこちらへ!」って言われたので(笑)、「これは言わなきゃ」って思って。ホントは行く前から心の中で準備もしていたんですけどね。

――素晴らしいと思ったのは、「親子じゃないです、恋人ですっ!」といった反発よりも、「恋人なので、そのように撮ってください」といったサラッとした指示がとてもエレガントでスマートに感じました。相手をうまくこっちに合わせさせるというか。

もしあのときに僕自身が僕たちの関係をネガティブに思っていたら、「なんで、そんなこと言うんですか!」って怒ったかもしれないけれど、僕はそれに関して全然恥じてるいところがないから。基本的に、間違っているのは世の中だと思っているから(笑)。

確かに自分に自信がない頃は、戦っていたかもしれない。でもいまは自信があるので、「おわかりにならないかもしれないですけれど、僕たち恋人同士なんですよ」っていう言い方ができるようになったんだと思う。

――クィア映画のなかで、一番好きな映画は?

断然、『モーリス』(’87)(笑)。明るい方向を見たところで終わる映画だから。原作では、エンディングにいくつものパターンがあるらしいんですね。その時代の制約のなかであまりポジティブではない形で終わっているのに、あの映画ではふたりの関係が希望に満ちた肯定的な形で終わっているので、とても気に入っているんです。その後主人公のふたりが実際に関係を始めたら苦労続きになるだろうなとは思うけれど、明るいエンディングにはグッときます。

それ以降の映画になっていくと、ゲイを描くときにHIVの問題抜きには語りにくくなってしまう傾向があるんですよね。そういった問題が入ってくると、単純なラブ・ロマンスになりにくくなってしまう。悲恋みたいなものはもうたくさんって思ってるから、ポジティブなメッセージを渇望している僕には、やっぱり『モーリス』が一番なんです。

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