パトリック・ウルフの単独インタビュー

By Hisako Kondou & Yuki Keiser


パトリック・ウルフ

2. 歌詞はいつも実体験に

――最新アルバム『The Bachelor』には、いままでのポップでアップテンポな曲とは違ったカオス的な曲がいくつか収められているね。これはパトリックの個人的な体験と関係がある?

そう思う。レコーディングって、生命を産み落とすことに似ているところがあるよね。妊娠していることに喜びを感じる時期があり、それを過ぎるととてもつもない苦痛を感じて、(お腹のなかのものが)いなくなってしまえばいいと思うようになる。そんな気持ちになったとき、僕はアルバムの曲順を考え始めるんだ。すごく直感的な作業で、考えれば考えるほど満足しなくなるけどね。

――直感的に選曲しているの?

そうだね。だから前作のタイトルにもなっている「The Magic Position(マジックポジション)」っていう言葉はこの作業を行っているときに思いついたんだけど、曲順を決めるということは、僕にとっては曲を完璧な場所にポジショニングすることなんだ。人に聴かせることができるくらい完璧だ、って思う気持ちは感覚的で、ミュージシャンなど音楽を編纂する人間にとっては生まれ持った習性みたいなもの。

――だから1枚のアルバムにさまざまなタイプの曲が収められているのかな?

そう。サウンドだけじゃなくてよく歌詞を読み込んでいくと、最初は苦難と暗黒から始まるけど、少しずつそこを抜け出していく感じが伝わると思うよ。僕は明るい雰囲気でアルバムを終わらせるようにいつも努めているからね。だからカオス的で攻撃的でノイジーな音で始まるけど、だんだんとメジャー音階に変わって、リラックスした感じに変化していくんだ。

――歌詞などとてもパーソナルに感じたんだけれど、曲作りのインスピレーションは何? 実際の体験に基づいているのかな?

そう、どの曲も実際の出来事や自分の人生体験と何らかの関係があると言えるね。そういう意味では僕は告白的な作詞家だと言えると思う。まるで自分自身のことを描いているかのように感じるミュージシャンのなかには、それを否定する人もいるけれど、僕は違う。

もちろん、詩と同じで、事実そのままだけではなくて隠喩的な表現も含まれている部分もあるけれど、それらの歌詞を解釈できたら、裏に実際の僕のライフストリーが繰り広げられていることがわかるよ。

パトリック・ウルフ
※BRITISH ANTHEMSというイベント名にちなんでデザインされた、イギリスの国旗ユニオンジャックをモチーフにした衣装。パトリックの大好きなブリティッシュ・ファッションをベースに、独自のセンスで大胆なスリットを入れて肌を露出させるなど、クィアな彼らしいセンス&遊び心が満載のデザイン。

――パトリックの衣装はいつも個性的でライブの重要な部分を占めていると思うんだけれど、昨日のBRITISH ANTHEMSのライブステージのファッションもとくべつ格好良かったわね!

ありがとう! あれはブリティッシュファッション! 大好きなんだ。

――裾のところが少し長かったので、日本の着物を彷彿とさせていたように感じたんだけど、意図的なのかな?

それはとくに意識していなかったけれど、若いときはファッションデザインもやっていて、すべてに日本的な要素を取り入れていた時期が確かにあったな。着物的なスタイルに下駄を合わせてみたりね。

――パトリックにとって衣装は大切?

衣装は僕にとって本当に重要で、いま仕事で関わっているデザイナーたちは、まるで兄弟や姉妹みたいに心が通じるし、同じ考え方を持っているんだ。ただし僕より断然いい仕事ができるけどね。彼らの想像力は果てしないんだ!

――ステージ衣装のデザインは自分で?

自分でどうにか衣装を作ったこともあるんだけど(笑)、2分経たないうちにバラバラになっちゃった! だからいまはデザイナーと密に仕事をすることにしている。実際は彼らが全部やっているから、一緒に仕事をしているなんて言うと少し失礼かも知れないけどね!

――実際には、どの程度関わっているのかな?

正確に僕がしていることを言うと、アイディアの指示を出している感じかな。たとえば、「次のフェスティバルシーズンには、ゴールドっぽく見えたい。女性っぽく見えたい」って僕が言えば、ヘアスタイリストが長いヘアエクステンションを用意してくれたりと、ただ言葉を投げかけられる大きなチームがいる。

新曲『vulture(=コンドル)』のときもまさにそう。コンドルだから、「コンドルみたいに見えたい」なんてことを言って、そうやってこんな衣装が出来上がったんだ。僕のデザイナーは僕がどんな物が好きかよくわかっているから、まずはニューウェーブっぽいものを探してくれて、民族的なものとミックスしてくれたんだ。

だから、このアルバムを作る初期の段階で、僕はこう言ったんだ。「革や木材のような自然のものしか使わないで。500年前の戦士たちが使っていたような素材しか使わないで」って。僕はインスピレーションのようなものを与えるだけで、彼らはそこから何かを生み出してくれるんだよ。


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