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3.PV制作とクィアな姉について
――パトリックのプロモーションビデオはいつも映画のようにストリー性が強くて、ビジュアル的にもとても魅力的よね! ビデオ制作にはどの程度関わっているの?
メジャーレーベルに所属しているときはあまり監督させてもらえなかったり、関わらせてもらえなかったんだ。「家に残ってマネキュアでも塗っていて」って感じの扱い。だから僕は台本を書いて、それを色んなディレクターに送ってみたんだ。そしたらその台本を脚色して送り返してくれた。それがこのアルバムにつながったんだよ。ただ、そのときは本当に予算がなくて、一緒に仕事をしたいと思うディレクターを残念ながら起用することはできなかったけど。
――プロモーションビデオは何からインスピレーションを得ているの?
デレク・ジャーマン監督(※ゲイであることをカミングアウトしていた、イギリス出身の映画監督、舞台デザイナー、作家。1986年にHIVへの感染が判明。1994年にエイズにより亡くなった。)からインスピレーションを得たよ。だから、女優のティルダ・スウィントンと仕事をして、そこから彼女にも影響されたんだ。
――ティルダ・スウィントンは、デレク・ジャーマンのミューズとしても有名で、彼の映画に本当に多く出演しているよね。デレクの親友でもあったし。それもあってパトリックのPVにも出演していたのね!
そう。当時ティルダに、「誰かディレクターを知っている? こういう人を探しているんだけど…」って言いかけたら、「知っている。でも映画は自分で作って!」って言われて。不景気でお金がない80年代の後半、デレク・ジャーマンやサリー・ポッター(※ティルダ・スウィントン主演でクィア要素を含む映画『オルランド』(’92)などを撮ったイギリス人監督)がまさにしたことなんだよね。
――お金がなくても、いいものを作ることは可能?
うん、できると思う。フィルム製作者たちは銀行から200ポンドだけ引き出して、照明もなくても、とにかく撮影をしていたわけ。本当に実験的な撮影だった。最近撮ったPVも照明なしで撮影したんだよ。照明器具や空中撮影をするヘリコプターを使う予算がなかったからね。だから自分たちで工夫するしかない! カメラを上向きに構えて、風が自然に吹いてドレスを揺らすのをひたすら待つ、とかね。
でもこういう方法で撮影しているからこそ、本当に新しい発見がたくさんあって視野が広がるよ。映画やミュージックビデオの実験的側面をもっと尊敬するようになったね。すべてやりつくされた感があるいま、基本に立ち戻って実験的で粗野なやり方に戻りたくなる。とにかく、本当にこのやり方を楽しんだよ。でも、ディレクターたちとコラボするのも好きだよ。(ヒソヒソ声で)お金がかかるけどね!
――次に実現できるよ! ちなみに、パトリックのお姉さんもビデオ監督を務めているんだって?
そう! 実は父親がテレビの製作関係の仕事をしていたので、僕らには同じような血が流れているのかも。
で、姉貴はビデオ監督をしていて、ついこの間ブライアン・フェリーのミュージックビデオを完成させたばかりなんだけど、彼女に圧倒されたよ。ジョー・アップスっていうんだけど、本当にすごい人だよ。フェミニストでクィアでもある。本当に勇気のある人。
――そうなんだ! とても素敵なお姉さんね!!
この間もさっき言ったサリー・ポッターのことを話していたんだけど、「知ってる? サリー・ポッターも含め、女性の映画監督ってたった2,000人しかいないのよ。男性監督は10億人位いるのにね。」って嘆いていた。彼女の指摘する通り、女性やゲイ男性が男より劣っているという偏見はいまでも残っている。だから僕は姉貴をとても応援しているんだ。だって、たった一本のビデオを制作するのに、彼女が相応の評価を得るのには、本当に一生懸命戦わなければいけないんだから。
面白いのが、彼女の名前はジョー(Jo)って言うんだけど、みんな最初は男の「Joe」と勘違いして電話をかけてくる。姉貴は「女でもパワフルでクリエイティブでいることが可能なのよ」って言っている。僕も心から共感するよ!
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