国際的アーティスト・ピュ~ぴるさんのインタビュー

By Yuki Keiser


ピュ~ぴるさん

3.苦しみから生まれる作品

――苦しい思いから作品が生まれるアーティストが多くいますが、ピュ~ぴるさんの場合はいかがですか? 「Selfportrait」では、幼少のときの苦しい経験も題材になっていますが。

そうですね。「Selfportrait」の各写真のタイトルのネーミングは全て実体験に基づいているの。12歳の時に、ストレスで髪の毛が無くなってしまうほど、学校でとても虐められていたの。それで精神的な神経症になってしまって。

「傷を負った12歳の少年」
※「Selfportrait」の作品「傷を負った12歳の少年」

「笑っていいとも!」に出ていた時期は、バカキャラみたいなのを演じていてそれなりに楽しかったんだけれど、それを演じるのに疲れてタイに行くことにしたの。漫画喫茶でバイトしながらニットを編んでいたのも、強迫神経症からきていて。12歳のときに既になっていたんだけれど、発作はずっと眠っていたの。でも丁度その頃に再び現れて、苦痛と共に一生懸命ニットを編んで自分を落ち着かせていた。

その「Selfportrait」は、撮っている途中に横浜美術館からオファーがきたの。ちょうどSRSとも同時期だったので、タイで手術した3日後に帰国してすぐ女性器の写真を撮って。手術直後だから立てなくて、毛を剃って鉄パイプにぶら下がって、触れるだけでも痛いし、血を流しながらの撮影だった。それで5日後には、横浜美術館に毎日通って、「GOTH」で展示した純白のウェディングドレス・Virgin Whiteの制作に入ったの。

――壮絶な展示会でしたね! 

そう(笑)。2008年2月頃にSRSにまつわる全ての痛みが終わって、その後また台湾の美術館で展示したんだけど、2009年は全てやり遂げた感じがして、急にポッカリ穴が空いてしまったの。

中学生の時からずっと苦しみや悔しさを感じていたのね。「笑っていいとも!」に出ていた時も、当時セクシュアルマイノリティの人がお茶の間に出る事ってそんなに無かったから、存在を知ってもらいたい気持ちも少なからずあったし。社会に対して悔しい想いもあった。それがいつも原動力のひとつだったので、やり遂げてしまったと感じた2009年の初めくらいに、ポッカリ心に空白が空いてしまったの。

――それでどうしたんですか?

色々と考えていて、途中おかしくなっちゃったりもしたの。さっき話に出た「第三の性」と言うのにも関わると思う。結局、手術など全てやり遂げても、たとえば背はやっぱり高くて、日本だと街を歩いているだけで凝視される事があるのよね。特に私の住んでいる場所は、一歩家を出るとファッショナブルで緊張感が込み上がる街。いまでも、街中で色目的に“オカマ”として見られるのは凄く嫌で。そういった外見の苦しさは、手術をしても永遠にあるんだろうなというのに気づいて、憂うつになったの。

でも憂鬱の先に、みんな誰でもそれぞれ苦しみを持っていて、私は自分で選んでこうなっているとも思った。だから、それを逆手にとって創造性に向けていこう、と。しかも、ただテレビにヘラヘラ出るんじゃなくて、ヘテロセクシュアルの感性では出来ないような、ゲイやクィア独特のセンス、そのハイセンスをクリエイティブに持っていこうという想いが原動力になったの。東京は面白いってよく言われるけど、私からするとなんか遅いのね。若い人のファッションは狂っていて面白いかもしれないけど、クリエイションに対する姿勢は海外のほうが進んでいて徹底しているように感じている。だからこそ東京からそれを変えていきたいし、世界に表していきたい。別の場所に自分を移動させるのではなく、場所を移動させるという発想。

――苦しみをポジティブに向けた時、人間ってより一層輝きますよね。いまは、新しい作品に向けていますか?

そう。ポジティブに向けるまでに1年ほどかかったけど、いま新しい作品を創造中ですごく上がってきているの! 髪の毛って日々抜けるじゃない? その毛をずっと集めていて、巨大な額に毛を入れてグラデーションをつくったらすごく美しくて。その作品と、あとSRSという事をよりダイレクトにした作品も展示しようと思っている。それはすごくショッキングな作品なの。他にもドローイングや、今までに無かった小さな立体も創っている。出来れば2010年中に展示したいなと思っている。

「Selfportrait」では、美のベールをかけていたのね。本質的なことは全部撮っているんだけど、色使いや、人が見られるように美のワンクッションも入れているの。次の作品の一部は、婉曲なしでそのまま展示したい。「そんなに美しいものじゃないんですよ、私たちがやってきたことは。現実はこうなんです。どうですか?」って見せたい。これもまた私の切るカードですね。

――この新しい作品もそうですが、とてもダークながらも、ピュ~ぴるさんの作品には常にユーモアが感じられますよね。ブラックだけれど(笑)。

そうね。私のなかではユーモアは大切な事なの(笑)。

――台湾で何度か展示していますが、いかがでしたか?

1回目は、パフォーマンスもやったのだけれど、失恋をした後でギリギリの、精神的にもとてもハードな状態だったの。それで精神的に限界な瞬間があって、1回ブチ切れちゃって現地で壊れちゃったのよね(笑)。レストランで、テーブルをバーン!って叩いて、場を飛び出すみたいな(笑)。ひっくり返すまでいかないけど(笑)。

――激しくドラマティックですね(笑)。それはまた何で(笑)?

その時はまだ手術前で、「両性具有」というのが自分の中でのテーマだったの。素っ裸になるパフォーマンスもする事になっていたんだけど、台北市長も来るから、「最後までは脱がないでくれ」など、色々と規制があったりして張り詰めていて。でも、裸にもなるから、自分の美意識に辿り着くまで痩せたくて、せっかく台湾に来ているのに、そして朝から晩まで制作しているのに、ほとんど私は何も食べなかったのね。それなのに、手伝いに来ていた人の1人が「超美味しいっすね、これ!」って目の前でモリモリ食べているのよ(笑)。だからブチン!って切れて、お金だけバーンって置いて、「これで食ってなよ」とか言って出ていった(笑)。台北の裏通りを号泣したがら疾走し美術館の前で倒れ込む。みたいな。我ながらドラマしてるよね。(笑)

――(笑)若い子たちの無神経さも想像つくけれど、彼らもびっくりしたでしょうね(笑)。

そう(笑)。それでも、みんな付いて来てくれたの。だから、なんか酷くても面白い想い出で、とても印象深かった。皆にはとても感謝しております。

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