ドキュメンタリー映画『ピュ~ぴる』

By Yuki Keiser


『ピュ~ぴる』

1.カメラを回しながら唯一泣いたとき

日本人現代アーティストでMtFトランスセクシュアルでもある、ピュ~ぴるに昨年Tokyo Wrestlingでインタビューを行った。当時の取材でもお話しいただいたが、自身のアート作品が確立する前の手作りのコスチュームの時代から横浜トリエンナーレでの圧巻のパフォーマンスに至るまでの人生を、本人や家族のインタビューを交えながら長年の友人である松永大司が8年間に及んで撮影した。結果、親友にしかキャッチできない、ピュ~ぴるの素顔が垣間見られる親密で貴重なドキュメンタリー映画『ピュ~ぴる』が完成した。ロッテルダム国際映画祭やパリ映画祭をはじめ、同映画はすでに海外の映画祭で上映され、多くの外国メディアで取り上げられ好評を博している。日本では、今週末(3月26日)より公開予定だ。TW編集部全員一致でリコメンドする作品!

★『ピュ~ぴる』
●監督・撮影・編集/松永大司
●出演/ピュ~ぴる
●配給・宣伝/マジックアワー
●日時/2011年3月26日(土)~
●場所/渋谷ユーロスペースほか
●オフィシャルHP/www.p2001.com
●ピュ~ぴるのオフィシャルHP/www.pyuupiru.com/

――昨年ピュ~ぴるさんのインタビューを行ったときすでに、アート作品を始められた経緯のお話などを伺っていたので、その頃から撮影しているドキュメンタリー映画が観られてとても興味深かくて、当時のお話を思い出しながら観て感動しました。10年ほど前から撮影を始めていますが、そのきっかけは何でしたか?

ピュ~ぴる(以下P):
もともと友人だった大司が映画を作ってみたいと言ったので、「じゃぁ私を撮ってよ!」と軽い気持ちで言ったのがきっかけなんです。だから最初は、映画として公開されるということをあまり想像していませんでした。

松永大司(以下M):
最初は親が自分の子どもをホームビデオで撮るくらいの気持ちですよね(笑)。

P:
最初は、何事もない日常をずっと撮っていたので、そのうちカメラがあることを意識しなくなって、大司が空気みたいな存在になったんです。だから恥ずかしいことや、今見ると子どもっぽいなぁと思うことも結構言っているんですよ(笑)。

『ピュ~ぴる』
※ドキュメンタリー映画『ピュ~ぴる』の松永大司監督(左)と昨年、TWでインタビューを行ったアーティストのピュ~ぴる。

――ピュ~ぴるさんが整形をする前のノーメイクの素顔なども公開されていたり、親密なシーンもたくさん入っていますよね。

P:
実は、映画は未だに全て観ていないんですよ。公開されることが決まってから、観ないようにしたんですね。でないと、顔チェックとか絶対にするじゃない?(笑) 大切なものが入っている場面でも、「この顔いやだからカットして!」と言って止まらなくなりそうだから、見ないでノータッチにすることを決めて。だからあの映画には恥ずかしいこともたくさん詰まっているの。

――ピュ~ぴるさんは、アーティストとしてのイメージにとてもコンシャスな方の印象があって、今までメディアにあまり素顔を出していなかったので、映画を観たとき驚きました。

P:
でしょ? だってみんなは私の今の状態に出会っていて、10年前の顔などは知らないのよね。いやな顔などを気にするのは小さなことだとそのうち思えるようになって。その先にあるものが伝わったらいいなと感じたので、全て任せたの。

『ピュ~ぴる』
※3月26日より公開の映画『ピュ~ぴる』

――お二人は長年の親友ですが、お互いの印象は?

M:
ピュ~ぴるに初めて会ったときダチョウの格好をしていたので、強烈な第一印象でしたね(笑)。彼女は自分の世界にいない人で、その周りもみんな自分のやりたいことを突き進んでいる人だけで、僕にとっては新しい人達ばかりだった。良い意味でクレイジーというか。本人の前で言うのも何ですけが、心がとてもピュアで優しい人で、最初から圧倒されながらリスペクトしていた。

P:
大司は女性的な感性も持っていて、何かお姉さんっぽいのよね。だからあそこまで気を許せたんだと思う。私が大変なときもケアしてくれるところがあったから、あんなに親密に撮れたんじゃないのかな。

――映画に詰まっている8年間を振り返って、特別心に残るシーンは何ですか?

P:
やっぱりカストレーション(去勢手術)したときのことが自分のなかで一番印象深いですね。今でもフラッシュバックして泣きますね、親に申し訳ないと思って。

M:
僕もそうです。撮影し始めてから11年目ですけど、カメラを回しながら唯一泣いたのがそのときですね。去勢をする動機や、それがどういうことなのかは頭では理解していたつもりなんですが、実際は自分の想像を遙かに超えていて。世の中にはこういう生き方をせざるを得ない人がいるんだって痛感したときで、今でもその想いは鮮明に残っています。そいうことも、やっぱり伝えなければいけないなとあのとき強く感じたんです。


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